日本人の約5人に1人は腰痛に悩まされている|腰痛の原因や解消法・予防法
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日本において腰痛患者は増加傾向にあり、40歳以上の約5人に1人は腰痛に悩まされているといわれています。

この記事で腰痛についてまとめ、腰痛の原因や解消法・予防法、腰痛になりやすい人の特徴などについて解説します。

腰痛に悩まされている人は多い

厚生労働省の『2019年 国民生活基礎調査の概況』によると、日本国内における腰痛患者数はおおよそ2,600万人と推定され、約5人に1人が腰痛に悩んでいます。

同省の調査によると、腰痛は日常生活で自覚している症状の中で、男性では第1位、女性では第2位です。

腰痛の原因

腰痛の原因は腰の神経や脊椎の障害、内臓の病気などさまざまですが、その中で原因を特定できる腰痛(特異的腰痛)は全体の約15%です。残りの約85%は原因の特定が難しい非特異的腰痛であり、腰痛症などと診断されます。(※)

※ 厚生労働省『社会福祉施設における安全衛生対策マニュアル~腰痛対策とKY活動~ 第2章』

特異的腰痛

特異的腰痛の代表的な病気としては、椎間板の一部が外に飛び出す椎間板ヘルニアや、加齢によって椎骨や椎間板が変性する脊柱管狭窄症、椎骨の骨折を招いて脊髄神経根を圧迫する骨粗しょう症が挙げられます。

これらはすべて、何らかの理由で脊髄神経根が圧迫されることにより、腰の痛みや脚のしびれが生じます。

また、腰には内臓の神経が多く通っているため、慢性すい炎や腎う腎炎、尿路結石、子宮内膜症など内科系疾患によって腰痛が起こることもあります。重い病気が隠れている可能性もあるため、注意が必要です。

腰痛の症状

腰痛の症状は、腰の痛みや重みです。腰痛の原因によって痛みの現れ方が異なるため、受診時には以下のように痛みについて具体的に説明することが大切です。

  • どのように痛いか?
  • どんな時に痛いか?
  • 腰以外に痛い部分はあるか?

例)

  • 腰から脚にかけてしびれるように痛い
  • 安静にしていても痛い
  • 疲れた時やたくさん動いた時に痛い

腰痛を起こしやすい人の特徴

腰痛を起こしやすい人には、以下のような特徴があります。

  • 同じ姿勢を長時間続けている
  • 運動不足あるいは運動のし過ぎ
  • 肥満
  • 冷え性や血行不良
  • 腰痛になりやすい職業に就いている(デスクワークや運送業など)

腰は体重を支えているため、肥満の人は腰に大きな負担がかかります。また、冷え性や血行不良があると筋肉が緊張して硬くなってしまうため、腰痛が慢性化する可能性があります。

立ち仕事や座り仕事など同じ姿勢を長時間続けたり、重いものを頻繁に持ち運んだりする仕事に就いている人は腰に負担がかかるため、腰痛を発症するリスクが高くなります。

腰痛の予防法

腰痛を予防するためには、生活習慣を見直して原因を取り除く必要があります。ここでは、腰痛の予防に効果的な生活習慣やポイントを紹介します。

適度な運動やストレッチ

痛みがないときは、積極的に体を動かしましょう。運動によって筋力を保つことで、腰の支持性が向上します。

中でも水中ウォーキングはおすすめです。浮力で腰への負担がかからないことに加え、水の抵抗で筋トレ効果や有酸素運動の効果も得られます。

適度な運動は腰痛の原因である肥満の解消だけでなく、ストレス解消にも役立ちます。

腰に負担をかけない姿勢を意識する

長時間車を運転したり、デスクワークを行ったりすることで、猫背などの悪い姿勢を続けると腰に大きな負担がかかります。常に良い姿勢を保つように意識することも、腰痛予防につながります。

良い姿勢での座り方は、以下のとおりです。

  • あごを引いて背筋を伸ばす
  • 腰と脚の付け根が直角になるように深く座る

中腰や前かがみなど、腰に負担がかかる姿勢での動作は避けましょう。

湯船につかって血行を良くする

入浴時はシャワーで済まさずにゆっくり湯船につかることで、全身の血行が良くなります。お風呂は緊張をほぐす効果があるため、ストレスが原因の腰痛を改善する効果も期待できます。

自分に合った寝具や寝る姿勢を選ぶ

寝ているときの姿勢も大切です。マットレスの硬さや枕の高さなど、寝具が自分に合っていないと睡眠時に筋肉が緊張して、腰に負担がかかります。

「ぐっすり眠れない」「朝起きると身体が疲れている」といった場合は、寝具が身体に合っているか確認してみましょう。

あなたの腰痛は大丈夫?危険度をチェックしよう

腰痛の原因によっては、放置すると危険な場合があります。下記のチェックリストで確認してみましょう。

  • 安静にしていても痛む
  • 我慢できないほどの痛みがある
  • 背中が曲がってきた
  • お尻や脚が痛む、しびれる
  • 脚のしびれがあり長く歩けない
  • 発熱がある
  • 腰以外にも痛みを感じる部分がある
  • 痛みの部分が腫れている
  • 1か月以上セルフケアしても改善しない

参考:第一三共ヘルスケア『腰痛の対策|くすりと健康の情報局』、NHK『腰痛の危険度セルフチェック。原因や症状、対処法・治療の注意点 | NHK健康チャンネル』

1つでも当てはまる場合は、病気が隠れている可能性があります。痛みを我慢せず、早めに医療機関で受診しましょう。

腰痛の対処法

ここでは、自分でできる腰痛の対処法を紹介します。

急性腰痛は冷やし、慢性は温める

腰が熱を持つ急性腰痛の場合は、氷のうや保冷材などで冷やしましょう。この場合は炎症が起こっており、病気が隠れている可能性もあるため、早めに医療機関で受診してください。

慢性の腰痛は、使い捨てカイロや温タオルなどで温めて血行を良くしましょう。湯船につかって全身を温めるのも効果的です。

痛みを和らげるストレッチを行う

痛みを和らげるには腰回りの筋肉をほぐしたり、腹筋や背筋を鍛えたりするのが効果的です。しかし、過剰な筋トレはかえって腰を痛めてしまうため、避けてください。座った状態や寝たままの状態でできるストレッチなどを、無理のない程度で行うとよいでしょう。

ここでは、簡単にできるストレッチを2つ紹介します。

▼腰を反らすストレッチ(キャット&ドック)
布団やヨガマットに四つ這いになり肘を伸ばし、以下動作を繰り返します。肘を伸ばした状態のまま行うことがポイントです。

  • 息をゆっくりと吐きながら背中を丸める
  • 息をゆっくりと吐きながら背中を伸ばしお尻を上げる

※参考動画
【腰痛軽減】2分間の腰伸ばしストレッチ(キャットアンドドッグ、姿勢改善)|
Juntendo University 順天堂大学>

▼腸腰筋のストレッチ
腸腰筋とは股関節の前の筋肉です。股関節の動きを助ける筋肉なので、ストレッチすることで腰の痛みが改善されます。以下手順に沿ってストレッチを行いましょう。

  • まずは片膝を立てた状態で座る
  • 立てた膝とは反対の手を地面につき、腰を持ち上げる
  • 立てた膝とは反対の股関節が伸びている状態をキープする
  • そのまま10秒止まる
  • 左右2セットずつ行う

※参考動画
【2分でスッキリ!】辛い腰痛に効果的|自宅で出来る簡単ストレッチ|
Dr.stretch ( ドクターストレッチ )

湿布などの貼り薬

湿布など腰に直接つける外用薬は、内服薬に比べて効果の持続時間が長いという特徴があります。

市販の湿布は手軽に購入できて慢性の腰痛に効果がありますが、どれを選んだらよいか分からないという方も多いでしょう。

筋肉痛や腫れなどの炎症がある場合は抗炎症作用に優れた「インドメタシン」、痛みが強いときは鎮痛作用の強い「ジクロフェナク」という成分を含む湿布を選ぶとよいでしょう。

つらい腰痛は医師に相談しよう

腰痛の原因が日常生活の中にあるケースも多いため、予防するためには生活習慣を見直して、その原因を取り除くことが大切です。

また、腰痛には内臓疾患や脊椎の病気などが隠れている場合もあります。つらい痛みは我慢せず、医師に相談しましょう。