下半身にしびれや痛みが…坐骨神経痛は症状を理解することが改善の第一歩
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下半身の痛みやしびれが続く場合は、坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)を疑う必要があります。このような症状を放置すると、やがて日常生活に支障をきたすこともあるからです。今回は、坐骨神経痛の概要や予防法・治療法について解説します。

坐骨神経痛とは?

坐骨神経痛は、お尻から足にかけて現れる痛みやしびれなどの症状の総称です。腰から足の方向に伸びる「坐骨神経」が何らかの原因で圧迫される、あるいは刺激を受けることで起こります。坐骨神経は下半身を自由に動かしたり、触れているものを感じたりする働きがあります。そのため。神経に問題があると下半身にも影響を及ぼします。

坐骨神経痛の症状

坐骨神経痛の症状の多くは、お尻から足にかけての鋭い痛み、あるいはビリビリとしびれるような痛みです。これらの症状は局所的に現れることがほとんどですが、坐骨神経は広範囲に広がっているため、下半身全体に現れる場合もあります。

※坐骨神経痛の範囲を表した図(坐骨神経痛|痛みの原因・症状・治療法・悪化を防ぐ日常生活のコツ|日本薬師堂|健康コラム

また排尿障害(尿失禁や頻尿)や熱感・冷感といった、痛み以外の症状が現れることもあります。特に排尿障害を含む神経障害は日常生活に支障をきたす可能性が高いので、早めに病院で診察してもらいましょう。

坐骨神経痛が起こる原因

坐骨神経痛はさまざまな原因で起こりますが、その多くは「腰椎疾患」によるものです。ここでは坐骨神経痛の原因について、腰椎疾患を中心に説明します。

腰部脊柱管狭窄症

腰部にある脊柱管が狭くなり、神経が圧迫されることを腰部脊柱管狭窄症といいます。脊柱管とは、背骨にある神経が通る管のことで、腰部脊柱管狭窄症は50代以上の人に多く見られます。体を後ろに反らすと脊柱管が狭くなるので、下半身の痛みや痺れがさらに強くなるのが特徴です。また歩行時に痛みが徐々に強くなり、長い距離を歩けなくなる「間欠跛行(かんけつはこう)」と呼ばれる症状も見られます。

腰椎椎間板ヘルニア

背骨と背骨の間には、クッションの役割を果たす「椎間板」があります。腰椎椎間板ヘルニアは、椎間板がつぶれることで中からゼリー状の髄核(ずいかく)が押し出されて脊柱管を通る神経を圧迫し、下半身に痛みやしびれが出る状態を指します。腰椎椎間板ヘルニアを発症する年代は20代が最も多く、次いで30〜40代です。腰部脊柱管狭窄症と異なり、体を前かがみにすると椎間板がつぶれやすくなるので痛みが強くなります。

筋力の低下

坐骨神経痛は腰椎疾患の他に、下半身の筋力の低下が原因で起こることもあります。特にお尻周りの筋肉は坐骨神経を保護したり、周囲の血流を促したりする働きがあります。軽度の坐骨神経痛であれば、お尻周りを含めた下半身の筋力を維持することで改善が期待できます。

筋力は坐骨神経痛の改善以外にも、日常生活を健康に過ごすために欠かせないものです。運動習慣を付けて、筋力の維持に努めましょう。

梨状筋症候群(りじょうきんしょうこうぐん)

梨状筋症候群とは、なんらかの原因で股関節を支える梨状筋が、刺激を受け痛みが生じている状態を指します。長時間の運転や、デスクワーク、過度な運動が梨状筋を圧迫・刺激し引き起こされる整形外科疾患です。

この梨状筋は、坐骨神経と隣り合わせとなっているため、梨状筋症候群が坐骨神経痛を引き起こすこともあるのです。

※図:梨状筋と坐骨神経(梨状筋症候群 (りじょうきんしょうこうぐん) | 済生会)

坐骨神経痛の予防法

坐骨神経痛を予防するためには、以下のように日常生活における動作や姿勢に気を付けることが大切です。

  • 重い物を持たない
  • かがむときは中腰にならない
  • 立っているときや座っているときは背筋を伸ばす
  • 座っているときに足を組んだり骨盤を後ろに倒したりしない
  • 長時間同じ姿勢をとらない

背骨に負担がかかる姿勢をとると神経が圧迫されやすくなり、それを繰り返すと坐骨神経痛が現れます。上記のポイントを意識して、背中や腰に負担をかけないようにしましょう。

またストレッチをゆっくり行い、背中の筋肉を伸ばすのも効果的です。背伸びや腰を回すなどのストレッチを行うと、背中の筋肉がほぐれて脊柱管や椎間板の負担が軽減されます。デスクワークのように長時間同じ姿勢でいる仕事の人は背中の筋肉が固まりやすいので、休憩時間にストレッチを行うことをおすすめします。

※坐骨神経のストレッチ動画
【坐骨神経痛】寝ながらできる2分間の坐骨神経ストレッチ( Juntendo University 順天堂大学 )

坐骨神経痛の治療法

坐骨神経痛の治療法には、いくつか種類があります。ここでは、保存療法と手術療法に分けて説明します。

多くの場合は保存療法

坐骨神経痛は基本的に保存療法を行い、症状をコントロールすることから始まります。主な保存療法は以下のとおりです。

  • 物理療法
  • 運動療法
  • 薬物療法
  • 装具療法

物理療法には熱で血流を促して痛みを軽減させる温熱療法や、腰の痛みのある部位を牽引して椎間板の圧迫を弱める牽引療法などがあります。運動療法は予防法で説明したようなストレッチを行い、背中の緊張をほぐして痛みを軽減します。

薬物療法は症状の根本的な改善にはなりませんが、痛みによる活動量の低下を防ぎ、筋力や体力の維持に有効です。装具療法ではコルセットで背中をサポートし、痛みを軽減します。装具で体を固定することで無理な姿勢を防ぐことができますが、長期間使用すると背中の筋力が低下してしまいます。装具療法を行う際はコルセットを長時間使用せず、調子に合わせて着脱するようにしましょう。

保存療法は坐骨神経痛の状況や本人の生活環境によって効果が異なるので、医師と相談して最適な方法を選択してください。

症状が悪化した場合は手術療法

坐骨神経痛は、まず保存療法によって症状の軽減を図るので、初期段階で手術療法を行うことは基本的にはありません。保存療法で効果が出ない場合や、症状が悪化して神経障害が現れた場合は手術療法を検討します。

手術後はリハビリの一環として運動療法や装具療法といった保存療法を行い、通常の日常生活に戻れるようにケアを行います。

あなたは坐骨神経痛?チェックリストで確認!

腰や下半身に痛みやしびれがあり、「坐骨神経痛かも……」と心配する人もいるでしょう。以下のチェックリストで、思い当たることがないか確認してみましょう。

□腰(身体)を動かすと足の痛みが激しくなる
□安静にしてもお尻や足が激しく痛くて眠れない
□足だけでなく、腰にも痛みがある
□身体をかがめると痛くて靴下を履けない
□立っていると足が痛くなって、立っていられない

当てはまるポイントが多いほど坐骨神経痛である可能性が高いので、不安な人は医師に診察してもらいましょう。

引用:坐骨神経痛|痛みの疾患ナビ|痛みの情報サイト - 疼痛.jp

坐骨神経痛の痛みや症状に合わせた治療をしよう

坐骨神経痛は進行すると症状が強くなり、日常生活にも支障をきたすことがあります。しかし、普段の姿勢や定期的なストレッチを意識するだけで予防できるケースもあります。坐骨神経痛の症状を理解した上で、痛みに合わせた対策・治療を行いましょう。