歯周病やむし歯は生活習慣病と深く関係している? 健康寿命を伸ばすために必要な口腔ケアとは
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虫歯や歯周病によって歯を失うと、生活習慣病のリスクが高まります。健康寿命を延ばすためには、口腔ケアをしっかり行うことが大切です。この記事では、虫歯や歯周病がもたらすリスクや、それぞれの予防方法について解説します。

虫歯や歯周病が生活習慣病のリスクを高める

まずは、歯を失う2大原因と生活習慣病の関係について解説します。

生活習慣病って何?

生活習慣病とは、生活習慣が原因で発症する病気のことです。不規則な食生活や運動不足、喫煙、飲酒、過度のストレスなどが積み重なると発症するリスクが高まります。

生活習慣病には、日本人の三大死因である「がん」「脳血管疾患」「心疾患」の他、動脈硬化症、糖尿病、高血圧症、脂質異常症などがあります。

歯を失うことで生活習慣病のリスクが増大する

「よく噛んで食べることは健康によい」といいますが、何らかの原因で歯を失うと噛むことが難しくなり、硬い食品を避けるようになります。

その結果、ミネラル・ビタミン・食物繊維などの栄養素が不足することがあります。噛むことができなくなると栄養のバランスが悪くなることにつながるため、生活習慣病のリスクが増大します。

歯を失う2大原因とは?

歯を失う2大原因は「虫歯」と「歯周病」です。若いうちは虫歯が原因である場合が多いのですが、加齢とともに残った歯が少なくなると歯周病を原因とする歯の喪失が多くなります。

また、歯は奥歯から失われる傾向があります。奥歯が失われると前歯の負担が大きくなるだけでなく、喪失した歯の前方にある歯は噛み合わせを維持しにくくなります。そのため、1本でも歯を失うと周りの歯にも悪影響を及ぼすのです。

国の取り組み「8020運動」とは?

1980年代頃から歯の喪失状況は改善されつつありますが、厚生労働省の『平成28年 歯科疾患実態調査結果の概要』によると、後期高齢者の約3割が総入れ歯を使っています。年齢が高くなるほど歯の喪失は進み、総入れ歯(全部床義歯)の使用者は65~69歳では8.9%ですが、70~74歳になると14.7%になり、75~79歳では20.1%、80~84歳では31.3%、そして85歳以降では46.3%と約半数の人がすべての歯を失います。

また同調査では、約半数の後期高齢者は歯の半数近くを失っていることもわかっています。

e-ヘルスネット(厚生労働省)『歯の喪失の実態』で紹介されている「歯のない人(無歯顎者)の割合の国際比較」によれば、65~69歳の無歯顎者率は米国が26%であるのに対し、日本はわずか7%です。また、65歳以上では英国が46%、カナダが58%であるのに対し、日本は18%にとどまっています。国際的に見ると、日本人の高齢者は比較的歯が残っているといえるでしょう。

厚生労働省と日本医師会では、お口の健康を保持・増進する目的で「8020運動」を推進しています。詳しくは下記の記事で解説していますので、併せてお読みください。

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>> 8020運動とは?健康寿命を伸ばすには20本以上の歯を残すことが大切

虫歯とは

ここでは虫歯の定義や症状、原因について詳しく解説します。

症状

虫歯とは、口内の細菌が出した酸によって歯が溶けた状態のことです。
前掲の『平成28年 歯科疾患実態調査結果の概要』によると、虫歯(う歯)を持つ人の割合は20~24歳では78.6%で、25歳以上は90%台です。虫歯は極めて罹患率が高く、ほとんどの人が生涯で一度はかかる疾患といえます。

虫歯になると「冷たい飲み物や食べ物で歯がしみる」「鋭い痛みが持続する」「噛むと痛い」などの症状が現れます。放置していると、最悪の場合は抜歯が必要になります。

原因

虫歯が発生する主な原因は、食べ物の残りかすが歯の表面に付着し、細菌が繁殖してできるプラーク(歯垢)です。

細菌は糖分を栄養源として繁殖するため、甘い食べ物は虫歯の主な原因の一つといえます。糖分の過剰摂取だけでなく、不十分な歯磨きや唾液の不足など、虫歯を高めるリスクは他にもあります。

歯周病とは

ここからは歯周病の定義や症状、原因について詳しく解説します。

症状

歯周病は、歯茎や歯の周りを支える骨などが溶ける病気です。歯周病が進行すると歯肉が炎症し、腫れたり出血したりしやすくなります。

最終的には歯が抜けてしまうこともありますが、初期段階から症状が現れるわけではありません。歯周病は突然重度の症状が現れるのではなく、徐々に進行する病気です。

原因

歯周病の直接的な原因はプラークです。プラーク1mgの中には1億個もの細菌が含まれており、そのほとんどは歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)に潜んでいます。

また、歯周病の間接的要因は生活習慣です。特に喫煙者は非喫煙者に比べて歯周病にかかりやすく、症状も悪化しやすいことがわかっています。

喫煙と歯周病の関係については、下記の記事でも詳しく解説しています。

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歯周病のセルフチェックをしてみよう

歯周病は初期段階では自覚症状がありません。症状に気付く頃には歯周病が進行していることがあるため、歯周病のセルフチェックをしてみましょう。以下は、e-ヘルスネット(厚生労働省)で紹介されている『歯周病のセルフチェックリスト』です。

  • 朝起きたときに口のなかがネバネバする
  • 歯みがきのときに出血する
  • 硬いものが噛みにくい
  • 口臭が気になる
  • 歯茎がときどき腫れる
  • 歯茎が下がり、歯と歯の間に隙間ができてきた
  • 歯がグラグラする

上記の項目に当てはまる場合は歯周病の可能性があるため、歯科で検査を受けることをおすすめします。

虫歯と歯周病の予防法

ここでは虫歯と歯周病を予防するために、今すぐできる口腔ケア方法を紹介します。

虫歯予防

虫歯にならないためには、歯磨きによるセルフケアが不可欠です。また、虫歯の原因である糖分の摂取量を減らすことも、虫歯の予防に効果があります。

しかし、セルフケアだけでは完全にプラークを除去できません。毎日のセルフケアに虫歯予防法を組み合わせる必要があります。

歯磨きの際にフッ化物配合の歯磨剤を使用する、もしくはかかりつけの歯科医院でフッ化物の塗布を受けるとよいでしょう。

虫歯、歯周病予防として普段の歯磨きを見直すことも大切です。正しいブラッシングの方法を紹介している動画を参考に歯磨きを見直してみましょう。

正しいハブラシの使い方 フルバージョン|ClubSunstar

また、デンタルフロスを使って歯と歯の間のプラークを落とすことも、虫歯、歯周病予防としては効果的です。下記の動画を参考に習慣化しましょう。

正しいデンタルフロスの使い方 フルバージョン|ClubSunstar

また、歯間ブラシを使ったブラッシングも取り入れると効果的です。歯ブラシだけでは落とせない、歯と歯の間のプラークを落とすことができます。

正しい歯間ブラシの使い方 フルバージョン|ClubSunstar

歯周病予防

歯周病の原因となるプラークを除去するには、毎日の歯磨きが欠かせません。その際に歯磨剤や洗口液を併用すると、プラークの付着を防止する効果が期待できます。

ただし、磨き残しの歯石をセルフケアだけで除去するのは難しいです。歯周病を予防・早期発見するために、定期的に歯科医院で検診を受けることをおすすめします。

虫歯や歯周病から歯を守ろう!

歯を失うと、生活習慣病のリスクが高まります。特に虫歯や歯周病は、毎日のセルフケアだけで予防するのは難しいです。健康寿命を延ばすためには日々の口腔ケアを欠かさず、定期的に歯科医院で検診を受けましょう。

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