
過去のことを悔やんだり、未来について不安になったりする時間が多く、なかなか「今」に心を向けられないという人は少なくありません。このような「心ここにあらず」という状態は、よりストレスを増幅します。このような状況から抜け出す方法の一つに、「マインドフルネス」があります。この記事では、マインドフルネスの概要や効果、実践方法について解説します。
マインドフルネスとは
マインドフルネスとは「自分の今の状態に意識を向けて注意を払うこと」で、心理学的治療の一つです。正確にはマインドフルネスストレス低減法といい、代表的な方法に「マインドフルネス瞑想」があります。
現在の日本は労働力人口が減少しており、少ない労働力で多くの仕事をこなさなければならない状況が続いています。そのため一人ひとりのパフォーマンスが重要になりますが、体力的・精神的負担も大きくなります。
Googleでは本社のあるアメリカでマインドフルネスをいち早く取り入れたことが話題となり、最近は日本でもマインドフルネス瞑想を研修に導入する企業が増えています。例えば、フリマアプリで有名なメルカリは、社員のメンタルヘルスケアを目的に、社員研修の一環としてマインドフルネス瞑想を導入しました。
「マインドフルネス」の意味
19世紀ごろからマインドフルネスに仏教が関係するようになったといわれており、「サティ(念という意味)」を英訳したものがマインドフルネス、というのが通説です。
マインドフルネスの効果
マインドフルネスを取り入れることで得られる効果は、たくさんあります。
ストレスの軽減
マインドフルネス瞑想を行うことで、ストレスが軽減されます。不安や悩みは、解決せずに抱え込むことでネガティブな感情が増幅していきます。その不安や悩みは次第に大きなストレスになってしまうのです。
そこで、マインドフルネスを取り入れて今の自分の状態に集中することで、不安や悩みを抱えていた自分を客観的に見られるようになります。自分自身を客観視することで、抱えていた不安も客観視できるのです。不安を俯瞰して捉えることができれば「落ち込むほどの不安ではなかった」「◯◯すればこの不安は解決できる」など、気づきを得ることができ、それはストレスの予防や軽減につながるのです。マインドフルネスの効果としては過度なストレスを感じなくなります。
集中力が高まる
マインドフルネス瞑想はさまざまな外的刺激に影響されることなく、自分だけに意識を集中するトレーニングです。それによって注意力をコントロールできるようになるため、集中力が高まります。マインドフルネス瞑想を始めてすぐに集中力が高まることはあまりありませんが、継続していくうちに集中力の向上を実感できるようになります。
睡眠の質が高まる
興奮状態が続くことで交感神経が優位になり、副交感神経とのバランスが崩れてしまいます。これを自律神経の乱れといいます。この自律神経の乱れが睡眠の質を下げる原因のひとつです。マインドフルネス瞑想を習慣化することで、副交感神経が優位になる状況を作ることができ、身体や脳をリラックスさせることができます。これをコントロールすることで、結果的に自律神経の乱れが解消され、睡眠の質が高まります。
自己統制力が高まる
マインドフルネス瞑想を習慣化すると、徐々に自分の心を観察できるようになります。すると自分の心を知ることができるため、自己統制力(自分の心のコントロールする能力)が向上します。
実際に抑うつ効果の可能性が示唆された研究結果もあり、現在はうつ症状の緩和や再発予防にもマインドフルネス瞑想が取り入れられています。
慢性疼痛の緩和
慢性疼痛は症状に見合う所見が少なく、痛みが3ヵ月以上続くもので、薬が効きにくいといった特徴があります。
マインドフルネス瞑想を取り入れた研究では慢性疼痛を緩和するエビデンスが見つかっていますが、今後確かな結果を得るためには大規模な研究が必要といわれています。
マインドフルネス瞑想を実践してみよう
マインドフルネス瞑想にはやり方がいくつかありますが、この記事では3つ紹介します。日常生活に取り入れやすい方法から実践してみましょう。
呼吸瞑想
呼吸瞑想は「腹式呼吸」を意識して行いましょう。腹式呼吸はお腹を膨らませたりしぼめたりするだけなので、だれでも簡単に行うことができます。腹式呼吸は横隔膜を使って行います。横隔膜には自律神経が集中しているため、腹式呼吸を行うことで自律神経の乱れが整うのです。
方法は、息を鼻から吸ったときにお腹を膨らませ、息を口から吐くときにお腹(横隔膜)をへこませるようにしぼませることを意識してください。
- どっしりと安定した姿勢で座る
- 骨盤を起こし左右の坐骨を床につける
- 上半身は背骨がすっと天まで引っ張られるイメージで背筋を無理なく伸ばす
※まるで頭頂にフックがつけられていて、背骨の1本1本が上下に引き伸ばされていく感覚 - 体を前後左右に動かしながら自分の中心を見つけていく(最も安定する姿勢を探す)
- 安定して快適な姿勢が整えば次は呼吸を感じていく
- 鼻からゆっくりと息を吸い、口からゆっくりと息を吐く
- これを何度か繰り返す
最初は2~3分、慣れてきたら10~30分と徐々に時間を増やしましょう。自宅や公園など、邪魔が入らない場所を選んでください。スマートフォンの電源をオフにし、気が散るものを周りに置かないようにしましょう。
より詳細を知りたい方は以下動画を参考に、呼吸瞑想を試してみましょう。
マインドフルネス瞑想(フルレッスン・23分)Yogalog|日本最大のヨガレッスン動画サイトYogalog
歩行瞑想
- 歩く場所を決める
- 目線は自分が落ち着く場所へ向ける
- 一歩一歩に自分の注意を向ける
- 自分のすべての意識は「足」に向ける
歩く時は、猫背にならないように注意しましょう。足の裏の感覚をつかみやすいように、裸足で行うことをおすすめします。歩くペースは自分で決めても構いませんが、畳一畳の往復に2分くらいかけるくらいのゆっくりしたペースで歩きましょう。
より詳細を知りたい方は以下動画を参考に、歩行瞑想を試してみましょう。
実践:歩く瞑想〜マインドフルネス瞑想より〜 Yogalog|日本最大のヨガレッスン動画サイトYogalog
食べる瞑想
- 食べる前にこれから食べる物の色や形をじっくりと観察する(重さや匂い、硬さなども観察する)
- ゆっくりと口に持っていきまずは唇に挟む(自分の体の反応に意識を向ける)
- 食べ物を口の中に入れるがすぐには噛まずに舌の上で転がす(舌で感触や風味を感じる)
- 歯に挟んで1回だけ噛む
- 味をゆっくりと感じる(最初に観察したとき、舌の上で転がしたときと比較する)
- ゆっくりと咀嚼しながら食べ物を五感で感じる
- 五感を使って十分に感じた後、ゆっくりと飲み込む
- 食べ物が喉を通って、食道を通って、胃の中に落ちていくことを丁寧に感じる
1口1分くらいのゆっくりしたペースで行いましょう。最初の数口だけ行っても問題ありません。食べる瞑想で、「ながら食べ」では気付かなかった味や食感を楽しんでください。より詳細を知りたい方は以下動画を参考に、食べる瞑想を試してみましょう。
【見ながら実践!】免疫力、集中力アップのマインドフルネス【食べる瞑想】|SPA!
マインドフルネスで心と身体を整える
マインドフルネスで心を整えるとストレスを軽減できるだけでなく、集中力や睡眠の質を高める効果も期待できます。紹介した3つのマインドフルネス瞑想は、日常生活ですぐに取り入れることができるので、ぜひ試してください。