
喫煙はがんや生活習慣病の原因になることが知られていますが、歯周病のリスクも高めます。タバコの有害物質によって歯茎の血液循環が悪化し、それによって歯周病の原因となる細菌が繁殖するからです。
この記事では、喫煙と歯周病の関係について詳しく解説します。簡単にできる歯周病のセルフチェックや喫煙者の歯周病予防法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
喫煙者は歯周病にかかりやすい
喫煙者は、歯周病にかかりやすいことがわかっています。
喫煙者は非喫煙者に比べて歯周病のリスクが2~8倍高くなり、1日10本以上の喫煙で歯周病リスクが5.4倍に、10年の喫煙で4.3倍になるという報告もあります。
また、喫煙は歯周病治療にも影響を及ぼし、喫煙者は非喫煙者よりも歯周病治療の効果が出にくいこともわかっています。
喫煙と歯周病の関係
口内の粘膜や歯茎から吸収されたタバコの有害物質によって歯茎の血管は収縮し、血流量が減少します。歯茎の血液循環が悪化すると、歯と歯茎の間の歯周ポケットの中で歯周病の原因菌が繁殖しやすくなります。その結果歯を支える骨が溶けるなど、歯周病が進行するのです。
歯茎の腫れや出血といった炎症は歯周病のサインですが、喫煙者は歯茎の血行不良によって腫れや出血が実際よりも少なく見えることも、歯周病が進行してしまう要因となっています。
歯周病のセルフチェックをしてみよう
歯周病はプラークと呼ばれる歯の汚れに含まれる細菌の毒素によって起こりますが、初期段階では自覚症状がありません。症状に気付く頃には歯周病が進行していることがあるため、歯周病のセルフチェックをしてみましょう。以下は、e-ヘルスネット(厚生労働省)で紹介されている『歯周病のセルフチェックリスト』です。
- 朝起きたときに口のなかがネバネバする
- 歯みがきのときに出血する
- 硬いものが噛みにくい
- 口臭が気になる
- 歯茎がときどき腫れる
- 歯茎が下がり、歯と歯の間に隙間ができてきた
- 歯がグラグラする
上記の項目に当てはまる場合は歯周病の可能性があるため、歯科で検査を受けることをおすすめします。
喫煙者は歯周病リスクが高いといわれているため、歯の健康を守るために気になる症状がなくても半年に一度は必ず歯周病の検査を受けましょう。
喫煙者の歯周病予防法
喫煙者の歯周病予防では、禁煙に加えて歯周病の原因となるプラークを減らす「プラークコントロール」も重要です。ここからは、歯周病の予防法について詳しく解説します。
禁煙
禁煙は、喫煙者の歯周病予防において最も効果的な方法です。
長年喫煙している方の中には「今さら禁煙しても変わらないのでは」と思う方もいるでしょう。しかし、禁煙後約2週間で歯茎の血流量が回復し、免疫や細胞の働きが高まるため歯周病のリスクが低下することがわかっています。
進行した歯周病においても禁煙は有効といわれているため、禁煙はいつ始めても遅いということはありません。
正しい歯磨き
歯周病を予防するためには、プラークをしっかり落として磨き残しがないように意識することが大切です。歯磨きの回数を増やしたり、力を入れて磨いたりすればよいわけではありません。
1日1回でもよいので、時間をかけて歯を1本ずつ丁寧にブラッシングしましょう。特に、就寝前は丁寧に磨くことをおすすめします。睡眠中は唾液が減り、歯周病が進行しやすいからです。
正しい歯磨きのタイミングやブラッシングの方法は、以下のとおりです。
- 歯磨きのタイミングは毎食後30分~1時間後・起床時・就寝前
- 歯の表面は、歯ブラシを歯に直角に当てて小刻みに動かして磨く
- 歯と歯の間は、歯ブラシを横だけでなく縦にも動かして磨く
- 歯と歯の間を磨く時は、デンタルフロスや歯間ブラシを併用する
- 歯と歯茎の間(歯周ポケット)も意識して磨く
- 歯周ポケットは歯ブラシを斜め45度にして、毛先を軽く入り込ませるように磨く
(力が強いと歯茎が下がってしまうので注意する)
正しいブラッシングの方法を紹介している動画を参考に歯磨きを見直してみましょう。
正しいハブラシの使い方 フルバージョン|ClubSunstar
また、デンタルフロスを使って歯と歯の間のプラークを落とすことも、虫歯、歯周病予防としては効果的です。下記の動画を参考に習慣化しましょう。
正しいデンタルフロスの使い方 フルバージョン|ClubSunstar
また、歯間ブラシを使ったブラッシングも取り入れると効果的です。歯ブラシだけでは落とせない、歯と歯の間のプラークを落とすことができます。
正しい歯間ブラシの使い方 フルバージョン|ClubSunstar
定期的な歯石除去
歯科での歯石除去は、歯周病の基本的な治療です。歯石はプラークが石灰化し、歯の表面で石のように固まったものです。歯石の中やそのまわりには、たくさんの細菌があり、歯周病を進行させる原因となります。歯石は歯ブラシでは取れないため、定期的に歯科で取り除いてもらう必要があります。
プラークが歯石になることを防ぐために、普段から磨き残しのない歯磨きを意識しましょう。
喫煙による歯周病以外の影響
喫煙時に直接煙が触れる口内は、最初にタバコの影響を受ける部分です。ここからは、歯周病以外に喫煙が口内に及ぼす影響について解説します。
歯や歯肉の変色
喫煙によって、歯の表面には「ヤニ」と呼ばれるタールが付着して黒ずみます。
毎日の歯磨きや歯科での定期的なクリーニングを行っていても、長期間の喫煙による着色を完全に防ぐことはできません。
また、歯だけでなく歯茎もニコチンの影響で毛細血管が収縮し、暗紫色に変色します。
口臭
喫煙者の口内はタバコのニコチンやタールなどによる臭いだけでなく、歯周病が悪化するにつれて歯周病菌が発する悪臭も加わります。
ただしタバコの臭いが強いため、歯周病の臭いに気付かないこともあります。
がん
喫煙によってがんのリスクが高くなることは、よく知られています。
口腔や咽頭は、喫煙時に発がん性物質を多く含む煙に直接触れます。口腔がんの80%は喫煙が原因であり、口腔・咽頭がんのリスクは非喫煙者の約2.4倍といわれています。
歯周病予防は全身の健康につながる
喫煙は歯周病を始め、口腔の健康にさまざまな悪影響を及ぼします。
禁煙はいつ始めても遅いということはありません。禁煙によって歯周病リスクを下げて口腔の健康を守ることは、全身の健康を守ることにもつながるのです。