
「8020運動」という言葉を聞いたことがありますか?
8020運動(ハチマルニイマル)は「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という運動で、健康寿命を伸ばすことを目的に厚生労働省が推進しています。
この記事では、8020運動について詳しく解説します。80歳で20本以上の歯を保つことと健康の関係や、8020運動の成果(運動によって国民の歯の本数はどのように変化しているか)についても紹介します。
8020運動とは
8020運動は「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という運動で、1989年に厚生労働省と日本歯科医師会によって提唱されました。
自分の歯を保つことが健康に与える影響は、さまざまな調査で科学的に明らかになっています。8020運動は、「生涯、自分の歯で食べる楽しみを味わえるように」との願いを込めて始まりました。
8020運動と健康の関係
歯を失う原因で最も多いのは、歯周病です。日本では成人の80%以上が歯周病にかかっており、自分の歯を失うことが他人事ではないことがわかります。
ここでは8020運動と健康の関係について「8020」の由来を踏まえて解説します。
そもそもなぜ「8020」なのか
そもそも、なぜ「8020」という数字が目標として設定されたのでしょうか。
「80」は、運動が提唱された1989年当時の日本人の平均寿命「80歳」に由来します。当時男性が75.9歳、女性が81.8歳で、「80歳」は男女の平均寿命でした。
現在(2020年)の平均寿命は男性が81.6歳、女性が87.7歳と「80」を上回っています。そのため、現在8020運動の「80」は人生のゴールではなく、高齢期を健康に過ごすという意味合いが強くなっています。
「20」は、自分の歯で食べるために必要な本数です。厚生労働省を始めとしたさまざまな調査において、歯が20本以上残っていれば性別や年齢に関わらず、固いものでも問題なく噛めることがわかっています。
歯の健康は健康寿命につながる
80歳で20本以上の歯を保つことが、健康とどのように関係するのでしょうか。
愛知県で行われた住民の追跡調査では、自分の歯が多く残っている人や歯がなくても義歯等を入れている人は、歯が少なく義歯等を入れていない人に比べて認知症の発症や転倒リスクが低いという結果が出ています。
また、歯が19本以下の人は20本以上の人と比べて、要介護認定を1.2倍受けやすくなるという報告もあります。つまり、歯が多いほど認知症などのリスクが低く、健康寿命が長くなるのです。
自分の歯を残すことは大切ですが、歯を失ってもすぐに健康が失われるわけではありません。入れ歯などの義歯できちんと噛める状態にすれば、健康寿命を伸ばすことが期待できます。
8020運動の達成率は伸びている
8020達成者の割合は年々増加し、運動の達成率は伸びています。
8020運動が開始された1989年当初、8020を達成している高齢者(75歳以上)は7%程度でした。しかし、その後達成者は年々増加し、2016年の調査では75~84歳の51%が8020を達成していることが報告されました。(参考:南知多町「健康とくらしの調査 2013」報告書|日本老年学的評価研究プロジェクト)
このように8020運動の達成率は伸びていますが、一方で高齢化によって高齢者の人口は増加しているため、歯の健康を損なっている人も少なくありません。
歯周病のセルフチェックをしてみよう
歯を失う最大の原因は歯周病です。歯周病は進行するまで自覚症状がほとんどないケースが多いため、チェックリストで自分の歯の状態を確認してみましょう。8020推進財団が公開している『歯周病セルフチェック』のチェック項目と判定は、以下のとおりです。
以下の項目にあてはまるものをチェックしてください。
- 歯ぐきに赤く腫れた部分がある。
- 口臭がなんとなく気になる。
- 歯ぐきがやせてきたみたい。
- 歯と歯の間にものがつまりやすい。
- 歯をみがいたあと、歯ブラシに血がついたり、すすいだ水に血が混じることがある。
- 歯と歯の間の歯ぐきが、鋭角的な三角形ではなく、うっ血してブヨブヨしている。
- ときどき、歯が浮いたような感じがする。
- 指でさわってみて、少しぐらつく歯がある。
- 歯ぐきから膿が出たことがある。
判定は以下のとおりです。
- チェックがない場合:これからもきちんと歯みがきを心がけ、少なくとも1年に1回は歯科検診を受けましょう。
- チェックが1~2個の場合:歯周病の可能性があります。歯みがきのしかたを見直しましょう。念のため、かかりつけの歯科医院で、歯周病でないかどうか、歯みがきをきちんとできているか、確認してもらったほうがよいでしょう。
- チェックが3~5個以上の場合:初期あるいは中等度歯周炎以上に歯周病が進行しているおそれがあります。早めに歯科医師に相談しましょう。
歯周病の可能性が低い場合や特に気になる症状がない場合でも、少なくとも1年に1回は歯科健診を受けましょう。
歯の健康を心がけて8020を達成しよう
80歳まで自分の歯を20本以上保つことは、認知症や転倒リスクを抑えて健康寿命を伸ばすことがわかっています。
食べる喜びは人生の喜びであり、歯の健康は身体の健康に直結します。日々の歯磨きやケアで歯の健康を心がけて、8020の達成を目指しましょう。