「戸締まりしたかな…」過剰な心配は強迫性障害の疑いあり|その症状と原因とは
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家を出た後、戸締まりをしたかどうか気になって、戻って確認したことがある人は多いでしょう。しかし、そのことが頭から離れず、何度も戻って確認してしまう場合は「強迫性障害」の疑いがあります。

この記事では強迫性障害の症状や原因、予防法などを詳しく解説します。また、強迫性障害になりやすい人の特徴やセルフチェックの仕方も紹介します。

強迫性障害とは

強迫性障害は、極めて強い不安感や不快感(強迫観念)を覚え、それを打ち消すために何度も同じ行為(強迫行為)を繰り返してしまう精神疾患です。

例えば「家の鍵をきちんと閉めたかどうか気になって仕方がない」という強迫観念から、「何度も家に戻って鍵がかかっているかどうか確認する」という強迫行為を行います。

本人は自分の行動が不合理であると自覚しているため、強迫行為を行うことに精神的苦痛を感じます。しかし、行為を行わないと耐えがたい恐怖感や不安感に襲われるため、やめられないのです。

WHO(世界保健機関)は、「生活上の機能障害を引き起こす10大疾患」の一つに強迫性障害を挙げています。

強迫性障害の症状

前述のとおり、強迫性障害の症状には「強迫観念」と「強迫行為」があります。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

強迫観念|頭から離れない考え

強迫観念とは、自分の意思に反してある考えが頭から離れなくなってしまうことです。その内容が不合理だとわかっているにもかかわらず、振り払うことができません。

具体的には、以下のような強迫観念があります。

・ドアノブや手すりがとても不潔に感じてしまう
・戸締まりをしたかどうか、電気を消したかどうかが気になって仕方がない
・誰かを傷つけたかもしれない、危害を加えたかもしれないという考えが頭から離れない

強迫行為|不安からせずにはいられない行為

強迫行為とは、強迫観念から生じる不安を振り払うために、何度も同じ行為を繰り返してしまうことです。

具体的には、以下のような強迫行為があります。

・周囲のものが不潔に感じるため、過剰な手洗いや入浴を繰り返す
・戸締まりしたかどうかが気になり、何度も家に戻って確認する
・誰かに危害を加えたかもしれないと考え、周囲の人や警察に何度も確認する

これらの症状は日常生活に影響を及ぼし、「確認に時間がかかって遅刻する」「仕事に集中できない」といった問題が生じます。

家族や周囲の人を巻き込むことも多く、人間関係がうまくいかなくなったり、家族や周囲の人に迷惑をかけたりすることもあります。

強迫性障害が発症する原因

強迫性障害の原因はまだ明らかになっていません。しかし、こだわりが強い強迫性パーソナリティの性格と、ストレスなど心理的な要因との相互作用によって起こるといわれています。人間関係のトラブルや親しい人の死、挫折などがきっかけで発症することもあります。

強迫性障害になりやすい人の特徴

強迫性障害になりやすい人は、まじめで責任感が強い、完璧主義、融通が利かない、こだわりが強いといった傾向があるといわれています。

それに加えてストレス耐性が低く、ストレスに対してうまく対処できないと、強迫性障害を発症しやすくなります。

強迫性障害の予防法

強迫性障害を予防するには、日々の生活の中で不安やストレスを感じた時にうまく対処して、強迫観念が起こらないようにすることです。自分の性格をよく理解して、ストレスの少ない生活を送りましょう。

引きこもりや不規則な生活は、強迫性障害の症状を悪化させるといわれています。規則正しい生活と睡眠、適度な外出を意識してください。仕事や友人といった社会との関わりも、無理のない範囲で持ち続けるようにしましょう。

強迫性障害のセルフチェック

強迫性障害のセルフチェックをしてみましょう。

・手が痛くなるほど、何度も手洗いを繰り返してしまう
・カギをかけたか、ガスを止めたか気になって仕方がない
・ありえないと思っても、頭の中に繰り返し湧いてきて振り払えない考えに悩まされる
・1つのことをやり終えるのに、非常に時間がかかる
・物事を順序どおり正しく行うことや、左右対称であることにこだわりすぎる

1つでも当てはまる項目があれば、強迫性障害の疑いがあります。

強迫性障害を発症すると本人は精神的苦痛を感じ、症状が悪化すると家族や周囲の人も巻き込んでしまいます。少しでも「おかしいな」と感じたら、早めに受診することをすすめします。

強迫性障害に対する周囲の人のサポートとは

強迫性障害の症状は家族など周囲の人にも影響を及ぼします。具体的には、手洗いがきちんとできたかどうかが心配で家族に「大丈夫」と言ってもらうこと(保証)を求める「保証の要求」や、鍵の確認などの行為を自分だけでなく家族にも強いる「強迫行為の代行」などです。これらは「巻き込み症状」と呼ばれ、家族や周囲の人にとって大きな負担となります。

ここでは、強迫性障害に対する周囲のサポート方法や気をつけるべきポイントについて解説します。

本人ではなく強迫観念によって「させられている」と理解する

巻き込み症状は周囲の人を振り回し、心身ともに疲労させます。また、強迫観念や強迫行為に対して「なぜこんなことにこだわるのか」とイライラすることがあるかもしれません。

しかし、本人も自分の行動が不合理であることを認識しながらも苦しんでいるのです。まずは、これらの行動は強迫性障害という病気によって「させられている」ということを理解しましょう。

巻き込みや強迫行為には協力しない

家族や周囲の人は、保証などの要求に応えることが本人のためになると考えて強迫行為に協力してしまう傾向があります。しかし要求はどんどんエスカレートするため応えられなくなり、結果的には本人の不安や怒りを増幅させて症状が悪化してしまうのです。

強迫行為には巻き込まれないように、毅然とした対応を心がけましょう。「保証は1回だけ」など本人と話し合ってルールを決めることも効果的です。

自分の個性を理解して不安とうまく向き合おう

まじめで責任感が強い、こだわりが強いといった性格は、決して悪いものではありません。自分の性格や個性を理解して受け入れ、不安と向き合いましょう。

それが強迫観念と強迫行為の悪循環から抜け出すための、最初の一歩となるはずです。