妄想や幻覚の経験がある人は要注意|統合失調症の症状となりやすい人の特徴とは
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妄想や幻覚などの症状が現れる統合失調症は珍しい病気ではなく、100人に1人の割合でかかるといわれています。ただし現在は不治の病ではなくなり、適切な治療によって普通の社会生活を送れるようになります。

この記事では統合失調症の原因や予防法、発症しやすい人の特徴について解説します。

統合失調症とは

統合失調症は気持ちが落ち着かず考えがまとまらなくなり、妄想や幻覚などの症状が現れる病気です。独り言が止まらない、話が支離滅裂になるなど、社会生活や人間関係にも影響を及ぼします。

日本の統合失調症患者は約80万人といわれており、世界各国の報告では約100人に1人が統合失調症であると報告されています。統合失調症は、意外と身近な病気なのです。

10代半ばから30代までに発症するケースが多いのですが、近年は治療法が進歩しており、早期に適切な治療を受ければ、通常の社会生活を送れるようになります。

統合失調症の症状

統合失調症の主な症状は妄想や幻覚ですが、他にもさまざまな症状があります。

妄想や幻覚などの陽性症状

陽性症状とは、ないはずのものをあるように感じる症状のことです。統合失調症では神経伝達物質のドパミンの働きが部分的に過剰になることによって、ないはずのものをあるように認識する幻覚や、現実ではないものを現実として信じ込む妄想が起こります。

幻覚は、以下のような症状に分けられます。
・見えないはずのものが見える「幻視」
・聴こえないはずのものが聴こえる「幻聴」
・匂わないはずのものが匂う「幻嗅」

このような陽性症状が現れると、本人には現実のことのように感じられます。そのため、自分では総合失調症であることに気付かないことが珍しくありません。

意欲が低下する陰性症状

陰性症状とは、あるはずのものがないように感じる症状のことです。

統合失調症によって部分的にドーパミンの働きが低下すると、意欲がなくなって無気力になり、感情の平板化が起こります。感情の起伏や喜怒哀楽が乏しくなり、身だしなみや人との関わりなどへの関心が低くなります。

認知や行動の障害

総合失調症になると、日常生活において記憶力や注意力、判断力などが低下します。具体的には目の前の仕事に集中できない、物事に優先順位がつけられない、考えがまとまらないといった症状が現れます。

大切なことを忘れたり、重要な判断を誤ったりするなど、社会生活においても支障をきたすことがあります。

統合失調症の原因

統合失調の原因は、まだ明らかになっていません。
遺伝や体質といった生まれ持ったものに、ストレスなどの環境要因が加わることで発症するのではないかといわれています。

統合失調症になりやすい人の特徴

統合失調症は、さまざまな要因が重なることによって発症します。特にストレスが関係することから、統合失調症になりやすいのは「ストレス耐性が弱い人」や「大きなストレスにさらされている人」といえるかもしれません。

統合失調症患者には内気でおとなしい、神経質、人の言動に傷つきやすい、コミュニケーションが苦手といった人が多いといわれています。

ただし、これらの条件が揃っても必ず統合失調症になるわけではありません。

統合失調症は予防できる?

ストレスにうまく対応し、賢く付き合っていくことが、結果的に統合失調症の予防につながります。

人によってストレス耐性は異なります。耐性が低い人がストレスを感じると心身のバランスが崩れ、さまざまな不調や病気を引き起こしやすくなります。

一方でストレス耐性が高く、ストレスにうまく対処できる人は、心身の健康を保てるでしょう。

統合失調症のセルフチェックしてみよう

セルフチェックシートを用いて、統合失調症のセルフチェックをしてみましょう。

□自分を責めたり命令したりしてくる、正体不明の声が聞こえる
□極度の不安や緊張を感じるようになった
□自分は誰かに操られていると感じる
□みんなが自分の悪口を言ったり、嫌がらせをしたりすると感じる
□「楽しい」「嬉しい」「心地よい」などと感じなくなった
□頭の中が騒がしくて眠れなくなった、または眠りすぎるほど眠るようになった
□人と話すのが苦痛になり、誰とも話さなくなった
□独り笑い、独り言を言うようになった
□直前のことを思い出せなくなったり、頭が混乱したりして考えがまとまらなくなった
□部屋に引きこもり、1日中ぼんやり過ごすようになった
□自分の考えていることが周りにもれていると感じる
□ささいなことに過敏になり、注意をそがれたり、興奮したりするようになった
□誰かから監視されたり、盗聴されたり、ねらわれていると感じる
□1つのことに集中したり、とっさの判断ができなくなったりする
□何をするのも億劫で、意欲や気力がなくなった
引用:
統合失調症セルフチェック | 八王子メンタルクリニック (hachiouji-mental.com)

上記のうち当てはまる項目が2つ以上あり、その状態が1か月以上続いている場合は統合失調症の可能性があります。

また、統合失調症になると妄想や幻覚などの前に、気分が落ち込むといった症状が現れることもあります。

統合失調症は、早期発見・早期治療が非常に大切です。少しでも疑わしい場合は、早めに受診することをおすすめします。

周囲の人が気付くべき統合失調症のサイン

統合失調症は患者本人に自覚がないケースが多いため、周囲の人が気付くことが早期発見への第一歩です。家族や周囲の人に以下のような様子が見られる場合は、医療機関や地域の精神保健福祉センターなどに相談しましょう。

・いつも不安そうで、緊張している
・「悪口をいわれた」「いじめを受けた」と訴えるが、実際は何も起きていない
・「監視や盗聴を受けている」というので調べたが、何も見つからない
・ぶつぶつと独り言をいっている
・にやにや笑うことが多い
・「命令する声が聞こえる」という
・話にまとまりがなく、何がいいたいのかわからない、話の内容がつかめない
・作業のミスが多い
・打ち込んできた趣味や楽しみにしていたことに興味を示さなくなった
・人付き合いを避けて、引きこもるようになった
・何もせずゴロゴロしている
・身なりにかまわなくなり、入浴もしない
・感情の動きが少なくなる
・他人の感情や表情から状況を把握することができなくなる

統合失調症は不治の病ではない

統合失調症に対して「不治の病」「一生治らず普通の生活ができない」というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、それは過去の話です。

統合失調症の治療法は、日々進化しています。早期発見・早期治療によって、症状をコントロールしながら普通の社会生活を送ることもできるようになりました。

ストレスにうまく対処するなどして統合失調症を予防しよう

ストレスにうまく対処することは統合失調症だけでなく、さまざまな病気の予防につながります。

統合失調症は本人に自覚がないケースが多いため、早期発見・早期治療のためには周囲の人の気付きやサポートが欠かせません。