食生活の乱れは心臓病につながる|予防に必要な心得とは
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食生活の乱れは心臓病を招きます。心臓病の危険因子である高血圧や悪玉コレステロールの増加、メタボなどは、塩分や脂質の摂りすぎなどの食生活が原因となって起こることが多いためです。

心臓病のなかでも、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患は、食生活の乱れによって発症リスクが高まることがわかっています。(「虚血」とは血液がない状態です。虚血性心疾患は心臓に血液がいきわたらない心臓病のことを言います。)

この記事では心臓病、特に虚血性心疾患と食生活の関係について解説します。心臓病を予防する食事についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

食生活の乱れは心臓病につながる

外食や偏った食事が多くなるなど食生活が乱れると、塩分や脂質、糖質の過剰摂取につながります。このような食生活が続くと高血圧や肥満、脂質異常症を招き、それらが動脈硬化を促進することで心臓病につながるのです。

令和3年版厚生労働白書では、日本における死亡のリスク要因において「塩分の高摂取」は第5位となっていることが報告されています。

食生活に関する要因である「多価不飽和脂肪酸の低摂取」「果物・野菜の低摂取」も合わせると年間6万人以上が亡くなっており、その半数以上は循環器疾患(心臓や血管に関する疾患)であることがわかっています。

心臓病とはどのような病気なのか

心臓病は、心臓の構造やその機能に関するさまざまな病気の総称です。その中で、食生活の乱れなど生活習慣によって発症リスクが高まるのは、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患です。虚血性心疾患は、主に動脈硬化が原因で起こります。

また、心臓病は日本における死因の第2位(第1位はがん)であり、年間20万人以上が亡くなっています。

心臓発作

心臓発作は心臓に血液を供給する血管の異常によって、突然血流が途絶えることで起こります。ある日突然激しい胸の痛みや圧迫感とともに発症する、命にかかわる危険な病気です。

心臓が正常に活動を続けるためには、多くの血液が必要です。心臓発作によって血液が行き渡らなくなると心臓のポンプ機能が低下し、最悪の場合は心停止によって死に至ることもあります。

心臓突然死

心臓突然死とは健康だと思われていた人が心臓発作などによって突然死することで、発症から24時間以内の死亡と定義されています。日本では、年間6~8万人が心臓突然死によって命を落としています。

心臓突然死や心臓発作の原因の多くは、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患です。虚血性心疾患は、動脈硬化によって心臓の血管が狭くなったり、血栓ができて血管が詰まったりすることで起こります。

乱れた食生活を続けていると心臓病になる理由

虚血性心疾患の危険因子は、脂質異常症や高血圧、メタボなどです。これらは脂質や塩分の摂りすぎやバランスの悪い食事といった乱れた食生活が原因で起こります。

乱れた食生活を続けていると、危険因子となる生活習慣病や動脈硬化を引き起こすため、結果的に心臓病のリスクが高まるのです。

また、虚血性心疾患は乱れた食生活だけが要因となって疾患する病気ではなく、運動不足も大きな要因の一つです。生活の食事と運動を見直すことで予防できるのです。

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心臓病を予防する食事とは

心臓病を予防するための食事における重要なポイントは、以下のとおりです。

  • 低脂質・低糖質を意識して適正カロリーを守る
  • 塩分は1日6g以下に抑える
  • アルコールはできるだけ控える(1日25g以下:日本酒1合程度)
  • 肉や乳製品などの動物性脂肪(飽和脂肪酸)を控える
  • 青魚などに含まれる不飽和脂肪酸を摂取する
  • 果物や野菜(きのこや海藻類も含む)などから食物繊維、ビタミン、ミネラルを摂取する

適正カロリーを守って肥満やメタボを防ぐことは、心臓病予防において非常に重要です。

減塩は高血圧を予防し、心臓に与える負担を軽減します。薄味を意識することはもちろんですが、かまぼこやハムなどの加工食品にも食塩が多く含まれているため注意が必要です。

薄味で物足りなく感じてしまう場合は塩分の代わりに、コショウやカレー粉などの香辛料、酢やレモン、すだちなど酸味のあるもの、うまみを引き出すだしなどを使うと満足感が得られやすくなります。

ここからは、心臓病を予防するために避けるべき食べ物や、積極的に取り入れるべき食べ物について詳しく解説します。

避けるべき食べ物

飽和脂肪酸やトランス脂肪酸は、血液中の悪玉コレステロールを増加させます。肥満や内臓脂肪を増やす原因にもなるため、控えましょう。

・飽和脂肪酸
飽和脂肪酸とは、魚類を除く肉や乳製品などの動物性脂肪のことです。肉の脂身やベーコンなどの加工肉にも、飽和脂肪酸が多く含まれています。

肉を食べる時は脂身の多い部分を避けて、赤身などを選びましょう。

また、鶏卵やいくら・明太子などの魚卵、レバー・ホルモンなどの内臓はコレステロールが多いため、食べすぎに注意してください。

・トランス脂肪酸
トランス脂肪酸は、マーガリンやショートニングに多く含まれています。市販のパンやケーキ、ドーナツ、ファーストフードはトランス脂肪酸を含む油で調理されることが多いため、注意が必要です。

外食が多い方はハンバーガーや揚げ物などを避け、和食の定食やそばなどを選ぶとよいでしょう。

積極的に取り入れるべき食べ物

・青魚
サバやサンマなどの青魚には、不飽和脂肪酸が多く含まれています。不飽和脂肪酸には動脈硬化や高血圧を予防したり、悪玉コレステロールや中性脂肪を減らしたり、血栓をできにくくしたりする働きがあります。

2日に1回、最低でも週に1~2回は、サバの味噌煮やサンマの塩焼きなどを主菜として摂取するようにしましょう。

・野菜や果物(きのこや海藻類も含む)
きのこ類や海藻類を含む野菜や果物には、食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富に含まれています。

食物繊維は余分なコレステロールや塩分を排出するため、動脈硬化や心臓病の予防に効果があります。

また、ビタミンの抗酸化作用は悪玉コレステロールの改善につながり、ミネラルの一種であるカリウムは血圧を下げる働きがあります。

献立に野菜サラダや海藻サラダを追加する、朝食や食後のデザートとして果物を食べるなど、工夫して食生活に取り入れましょう。鍋や野菜スープなどは、野菜やきのこ類を摂取しやすいためおすすめです。

・大豆製品
納豆や豆腐などの大豆製品は、ビタミンとミネラルを多く含んでいます。特に納豆に含まれるナットウキナーゼには血栓を溶かす働きがあるため、動脈硬化の予防に効果があります。

献立に冷奴や納豆を加えたり、牛乳の代わりに豆乳を飲んだりするのもよいでしょう。

避けるべき食べ物積極的に取り入れるべき食べ物
・飽和脂肪酸
肉の脂身、ベーコンやコンビーフなどの加工肉

・高コレステロールの食品
鶏卵、魚卵(いくらや明太子)
内臓(レバーやホルモン)など

・トランス脂肪酸
マーガリン、市販のパンやケーキ、ドーナツ
ファーストフードなど
・青魚
サバ、サンマ、アジ、イワシなど

・野菜や果物(きのこや海藻類も含む)

・大豆食品
納豆、豆腐、豆乳など

自分の食生活を振り返ってみよう

自覚のないまま乱れた食生活を続けてしまっている方も多いかもしれません。自分の状態を理解することは、食生活改善のための第一歩です。

以下のチェックリストをつかって「食事」に関する10個の項目をチェックしてみましょう。

□ ご飯やパンなど(炭水化物)の摂取量が多い
□ 脂っこいものが好き
□ ほぼ毎日間食をしている
□ 深夜の時間帯によく飲食をする
□ 朝食は食べたり、食べなかったり
□ 早食い、ドカ食い、ながら食いが多い
□ 濃い味付けが好みである
□ 外食やファストフード、レトルト食品をよく利用する
□ 甘い清涼飲料水をよく飲む
□ 野菜や海草類の摂取量が少ない

出典:あなたは大丈夫?生活習慣病のリスクをチェック!(一般社団法人 日本生活習慣病予防協会)

「あてはまる」項目が5個以上ある場合は要注意です。乱れた食生活によって、心臓病の危険因子である高血圧や脂質異常症などのリスクが高まっている可能性があります。食事を見直し、年に1回は健康診断を受けましょう。

心臓病予防には運動も効果的

心臓病の予防には、食生活の改善と併せて運動も取り入れると効果が高まります。運動習慣は心臓病や動脈硬化を防ぐだけでなく、危険因子である高血圧やメタボの予防や改善も期待できます。

ウォーキングや軽いジョギング、サイクリング、水中ウォーキングなどの軽い有酸素運動を1回15~60分、週に3~5回の頻度で行いましょう。

重量挙げなど強度の強い筋トレや短距離走、サッカーなどの激しい運動は心臓に負担がかかるため、注意が必要です。

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まずは食生活を改善して心臓病を予防しよう

虚血性心疾患による心臓発作などの心臓病は命にかかわる病気ですが、食生活の改善によって予防することができます。

現在の食生活を見直し、できるところから少しずつ健康的な食生活に変えていきましょう。