太っている人は要注意! 運動不足と肥満・メタボの関係や予防法を解説
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運動不足が肥満やメタボリックシンドローム(メタボ)を招くことは、よく知られています。内臓脂肪が増えると代謝が悪くなり、高血圧や高血糖、脂質異常症など、さまざまな生活習慣病を引き起こします。

特にメタボは単にお腹周りが大きいだけではなく、心臓病や脳卒中など命にかかわる病気のリスクが高い、危険な状態です。

この記事では運動不足と肥満・メタボの関係や、予防に効果がある運動について詳しく解説します。

運動不足は肥満・メタボにつながる

「メタボリック」は、日本語に訳すと「代謝」です。運動不足によって身体の活動量が減ると、食事からのエネルギーを消費しきれず、内臓脂肪となって蓄積されます。

メタボとは、内臓脂肪が増えることによって糖や脂肪を分解する代謝がうまく機能しなくなり、さまざまな生活習慣病を発症するリスクが高い状態のことです。

2020年に発表された厚生労働省の「国民健康・栄養調査報告」によると、肥満者(BMIが25以上)の割合は男性が33%、女性は約22.3%となっています。

また、メタボに関しては、20歳以上で要注意な人(強く疑われる人、予備軍の合計)は男性が約55%、女性は約17%と、肥満・メタボが身近なものであることがわかります。

肥満・メタボとはどのような状態をいうのか

「肥満」や「メタボ」という言葉はよく耳にしますが、それぞれどのような状態を指すのでしょうか。ここでは、肥満とメタボの定義について解説します。

肥満の定義

肥満は、肥満度を表す体格指標であるBMIが25以上の状態と定義されています。最も病気になりにくいとされる標準(BMI:22)と比べて、脂質異常症や糖尿病、高血圧といった生活習慣病リスクが2倍以上になります。

BMIは[体重(Kg)]÷[身長(m)の2乗]で算出できます。以下の計算式を参考に、自分の肥満度を確認してみましょう。

(例)身長175cm、体重80Kgの場合
BMI=80Kg÷(1.75m×1.75m)=26.14
BMIは26のため、肥満と判定

メタボの定義

日本では、以下の①と②に当てはまる状態がメタボと定義されています。単に腹囲が大きいだけでは、メタボには当てはまらないので注意してください。

①腹囲が男性85cm、女性90cm以上
②高血圧、高血糖、脂質異常症のうち2つ以上が当てはまる

肥満は「内臓脂肪型肥満」と「皮下脂肪型肥満」の2つに分けられますが、メタボの原因となり生活習慣病リスクが高いのは内臓脂肪型肥満です。

皮下脂肪型肥満と内臓脂肪型肥満は、脂肪の付いている部位によって見分けることが可能です。
皮下脂肪型肥満は、太ももやお尻など下半身を中心に脂肪が付き、洋ナシ体型となります。
一方、内臓脂肪型は内臓の周りに脂肪が付くため、お腹だけが大きく膨らみます。脚や腕にはそれほど脂肪が付かないため、お腹が丸いリンゴ体型となるのです。

また、皮下脂肪は皮膚の上から触ると柔らかくたるみを手でつかめますが、内臓脂肪はたるみが手でつかめず突っ張っているという違いもあります。

肥満・メタボになると心臓病や脳卒中の発症リスクが高まる

肥満やメタボで内臓脂肪が過剰に多い状態になると、代謝の異常によって血液中の中性脂肪や悪玉コレステロールが増加します(脂質異常症)。さらに高血圧や高血糖も引き起こし、血管の壁が厚く、硬くなる動脈硬化を促進します。

動脈硬化によって血液の流れが悪くなったり、血栓ができやすくなったりすることで、狭心症や心筋梗塞といった心臓病や脳卒中の発症リスクが高まるのです。

心臓病は日本の死因第2位、脳卒中は第4位であり、肥満やメタボが進行すると命を落とすこともあるので注意が必要です。

運動不足が肥満・メタボにつながる理由

運動不足によってエネルギー消費量が減ると、脂肪が蓄積されて肥満になります。特に内臓脂肪が増えると代謝が悪くなり、高血圧や高血糖、脂質異常症を引き起こしてメタボになるのです。

メタボはさまざまな生活習慣病の発症リスクを高めるため、注意が必要です。

運動不足解消には3メッツ以上の身体活動が必要

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動基準2013」によると、18~64歳においては以下のような身体活動が推奨されています。

  • 運動強度は3メッツ以上
  • 毎日60分あるいは、1週間に23メッツ・時以上行う

このことから、運動不足を解消するには3メッツ以上(息が弾んで汗をかく程度の運動)が必要ということがわかります。

メッツとは

「メッツ」という用語は初めて見るという方も多いと思います。「メッツ」とは身体活動の強度、「メッツ・時」は活動量をそれぞれ表す単位です。

「メッツ」は数字が大きくなるほどに強度が上がり、1メッツよりも2メッツの方が身体活動の強度が強いという意味になります。

また、「メッツ・時」は身体活動の強度(メッツ)に身体活動の時間(時)をかけて算出します。

(例)
・4メッツの身体活動を30分行った場合は、4メッツ×1/2時間=「2メッツ・時」
・2メッツの身体活動を60分行った場合は、2メッツ×1時間=「2メッツ・時」

運動不足解消に必要な具体的な身体活動

具体的には、ウォーキングや速歩、ゆっくりとしたジョギングなど3メッツ以上の身体活動を毎日30~60分行うとよいでしょう。

運動に慣れていない場合は、普段より10分でも多く体を動かすことを意識してみてください。10分程度の活動でも、運動不足解消や健康寿命を伸ばすために効果的です。

3メッツ以上に相当する身体活動の目安は以下の通りです。

メッツ活動内容
3メッツ以上通常歩行、室内の掃除、階段を下りる
4メッツ以上速歩、水中散歩、自転車に乗る、子どもと遊ぶ
5メッツ以上野球、ソフトボール
6メッツ以上ジョギングと歩行の組み合わせ、エアロビクス
7メッツ以上ジョギング、水泳、テニス、サッカー

肥満・メタボにならないために行いたい運動4つ

肥満・メタボを防ぐためには、エネルギー消費量を増やすことを目的とした有酸素運動を中心に行うのが効果的です。有酸素運動は、内臓脂肪を燃焼させる効果があるからです内臓脂肪を燃焼させるためにも、有酸素運動を1日20分~60分程度、週に150~300分程度行うとよいでしょう。

運動量が多いほど効果は大きいですが、少ない運動量でも内臓脂肪は減少します。短時間でも、少しずつでも運動を続けることが大切です。

ここでは、肥満やメタボを予防する4つの運動について解説します。

ウォーキング

ウォーキングは、運動に慣れていない方でも気軽に行える運動です。速歩のウォーキングを毎日続けることで、メタボのリスクを半減できるという報告もあります。

通勤や買い物など日常生活の中でも、積極的に歩く機会を増やしましょう。

ただ歩くよりも、「きついと感じない程度に早歩きをする」「歩幅を広げる」「腕を軽く振る」など、歩き方を少し工夫すると効率良くエネルギーを消費できます。

ジョギング

ジョギングは効率的な有酸素運動であり、内臓脂肪を燃焼する効果があります。

しかし、膝に体重の約3倍の負荷がかかるため、運動習慣がない方は無理をしないように注意してください。まずはウォーキングから始めて、少しずつジョギングに移行するとよいでしょう。

ウォーキングと組み合わせる、自分のペースでゆっくり走るといったスロージョギングでも効果を得られます。まずは継続することを目標に、無理のない範囲で行いましょう。

一駅分歩く

通勤時の歩行時間が長いほど、糖尿病の発症リスクが軽減されると報告されています。余裕がある時は、通勤時に一駅分歩きしょう。

他にも、ランチは会社から遠い店で食べる、出かけた時は家から遠回りのルートで帰宅するなど、通勤や日常生活のついでに、楽しみながら歩く機会を増やしていくとよいでしょう。

水中ウォーキング

水中ウォーキングは陸上でのウォーキングと比べると、短時間でも効率良くカロリーを消費できます。

浮力によって腰や膝への負担が軽減されることに加えて、有酸素運動と筋力トレーニングの両方の効果を得られることもメリットです。運動に慣れていない方や高齢の方でも、無理なく効率的に行える運動といえるでしょう。

定期的な運動で肥満・メタボを予防しよう

肥満、特にメタボは、内臓脂肪が増えて動脈硬化が進みやすくなっており、リスクの高い状態です。動脈硬化は心臓病や脳卒中など、命にかかわる病気の危険因子でもあります。

適度な運動、特に有酸素運動は内臓脂肪を燃焼させるため、肥満やメタボの予防に効果があります。日常生活の中で、短時間でもよいので運動の機会を増やし、習慣にしましょう。