運動習慣のない人が突然倒れることも…心臓病を予防するために必要な運動とは
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運動不足は動脈硬化を引き起こし、心臓病のリスクを高めます。運動習慣のない人がある日突然倒れる原因の多くは、心筋梗塞や狭心症といった心臓病です。

この記事では、運動不足と心臓病の関係について解説します。心臓病のリスクを減らすために必要な運動についてもお伝えするので、ぜひ生活に取り入れてください。

運動習慣がないと心臓病のリスクが高まる

運動習慣がないと、心臓病のリスクが高くなります。慢性的な運動不足が続くと、ある日突然、心臓発作を起こし、倒れてしまうことがあります。

令和3年版厚生労働省白書によると、日本において運動不足は喫煙、高血圧に次いで死亡に関するリスク要因の第3位となっています。また、運動不足がリスク要因である約5万人のうち、約4万人が循環器疾患(心臓や血管に関する疾患)であると報告されています。

心臓病とは

心臓病は、心臓やその機能に関するさまざまな病気の総称です。心臓のポンプ機能が低下する心不全、動脈硬化によって血流が悪くなる虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症)、心臓の筋肉の病気である心筋症、生まれつきの異常である先天性心疾患などがあります。

心臓病は日本人の死因の第2位(第1位はがん)であり、年間20万人以上が心臓病で亡くなっています。

心臓発作

心臓発作は何の前触れもなく突然起こり、激しい胸の痛みや圧迫感などを伴います。心臓に供給される血流が突然途絶えることが原因で起こる、生死にかかわる危険な疾患です。

心臓が働き続けるためには、多くの血液が必要です。心臓の表面には冠状動脈という血管が張り巡らされていますが、この冠状動脈に異常が起こり、血液が途絶えることで心臓発作が起こります。

血液が行き渡らなくなると心臓のポンプ機能が低下し、場合によっては完全に停止して死に至ることもあります。

心臓突然死

「突然死」とは健康だと思われていた人が急死することで、「発症から24時間以内の死亡」と定義されています。突然死の原因で最も多いのが心臓病による心臓突然死であり、日本では年間6~8万人が命を落としています。

心臓突然死や心臓発作の原因は、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患です。虚血性心疾患の主な原因は動脈硬化で、心臓の血管が狭くなったり、血栓ができて血管が詰まったりすることが原因で起こります。

運動不足によって心臓病になる理由

心筋梗塞や狭心症といった心臓病の主な原因は、動脈硬化です。

運動不足によって引き起こされる脂質異常症、高血圧、メタボ(メタボリック・シンドローム)などの生活習慣病は動脈硬化の危険因子であるため、結果的に運動不足は心臓病のリスク要因となるのです。

突然死のリスクを減らすために必要な運動とは

心臓突然死のリスクを減らすためには、運動習慣をつけることが大切です。運動は動脈硬化を防ぐだけでなく、危険因子である高血圧や脂質異常症の予防・改善効果も期待できます。

ここでは、心臓病を予防するために必要な運動について解説します。

軽い運動

ウォーキングやスロージョギング、サイクリング、水中ウォーキングなどの軽い有酸素運動は、心臓病の予防に有効です。1回あたりの運動時間は15~60分、週に3~5回の頻度で行いましょう。

「ややきつい」と感じる程度の強度を上限に、休憩を入れつつ無理のない範囲で行ってください。

エスカレーターやエレベーターを使わない

「運動する時間がない」「運動が苦手で抵抗がある」という方は、日常生活の中で身体を動かす機会を少しずつ増やしていきましょう。

普段、無意識にエスカレーターやエレベーターを使っている方は多いでしょう。3階までの移動であれば、階段を使う習慣をつけましょう。通勤や買い物などでも、できるだけ歩くことを意識してください。

歩くときは早足・大股で

日頃の歩き方もポイントです。早足・大股で歩くことを意識すれば、運動効果が高まります。早足は、太ももの筋肉や体幹を鍛えることにもつながります。

「なかなか歩く機会を増やせない」という方は、普段の歩き方を早足・大股に変えてみましょう。いきなり全部を変えると疲れてしまうので、例えば「家から駅までの間は早歩きをする」など、少しずつ無理のない範囲で取り入れると継続しやすいでしょう。

筋トレなどの無酸素運動は注意

瞬発的に強い力を出す無酸素運動には、重量挙げなど強度の強い筋トレや、短距離走、格闘技などがあります。これらの無酸素運動は、心臓に大きな負担がかかるため注意が必要です。

ただし、低負荷のレジスタンス運動(筋肉に負荷をかける動きを繰り返し行う運動)は、心臓に負担をかけず筋力の向上が期待できるため推奨されています。

スクワットや踏み台昇降などのレジスタンス運動を、有酸素運動と併せて週に2~3回取り入れると効果的です。回数は10~15回、2~4セット、無理のない範囲で行いましょう。

なお、運動中は息を止めないように注意してください。

簡単にできる有酸素運動・レジスタンス運動の組み合わせ例は、以下の通りです。

有酸素運動 レジスタンス運動
1 ウォーキング:30分 スクワット:12回2セット
2 ゆっくりとしたジョギング:30分 かかと上げ:15回4セット
3 水中散歩:40分(※水中散歩は有酸素運動とレジスタンス運動、両方の効果が得られる)
4 ウォーキングとジョギングの組み合わせ:40分 腕立て伏せ:12回2セット
5 サイクリング:40分 上体起こし(腹筋):12回2セット
6 ジョギング:30分 ダンベルスクワット:12回2セット

心臓病予防のために運動を習慣化しよう

運動によって動脈硬化を防ぐことは、心臓病だけでなく高血圧や糖尿病、脂質異常症など、他の生活習慣病のリスクを減らすことにもつながります。

運動を習慣にするコツは、「10分だけ早歩きしてみる」「階段を使ってみる」など、日常生活の中で運動の機会を増やすことです。

無理のない範囲で運動を習慣化して、心臓病を予防しましょう。