睡眠不足を甘く見るな|睡眠の負債は生活習慣病につながる
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睡眠不足は身体の不調だけでなく、生活習慣病の原因にもなります。心臓病や脳卒中といった病気を予防するためには、十分な睡眠が不可欠です。この記事では睡眠不足と生活習慣病の関係と、良質な睡眠を取る方法について解説します。

睡眠不足は生活習慣病のリスクを高める

睡眠不足は生活習慣病の原因の一つです。睡眠不足や睡眠障害の人はそうでない人と比較して、糖尿病のリスクが約2倍になるといわれています。日本人は他の国の人と比較すると睡眠時間が短いことがわかっているため、睡眠不足の人が多いと考えられるでしょう。

睡眠不足はなぜ健康に悪い影響を与えるのか

睡眠不足による悪影響はいくつかありますが、ここでは「ホルモン」と「自律神経機能」に着目します。

ホルモン分泌機能が乱れる

睡眠不足によって、食欲を増進させるホルモン「グレリン」が増加し、食欲を抑えるホルモン「レプチン」が減少します。その結果食欲が増し、肥満や糖尿病といった生活習慣病のリスクが高まります。「以前より食欲があるかも」と思った人は、十分な睡眠時間を確保できているかどうかチェックしてください。

自律神経機能が乱れる

睡眠不足になると交感神経(活動する神経)が緊張し、高血圧や脳卒中といった生活習慣病のリスクが高まります。本来睡眠時は副交感神経(リラックスする神経)が優位ですが、睡眠不足になると寝ている間も交感神経が働き、悪循環に陥ります。

具体的にどのような生活習慣病になるのか

睡眠不足によって発症する主な生活習慣病は、以下の6つです。

心臓病

心臓病はがんの次に死亡率が高い病気で、主に心臓に血流が流れにくくなる「狭心症」と、動脈に血栓が詰まって血流が止まる「心筋梗塞」があります。特に心筋梗塞は死に直結することもあるので、非常に危険な病気といえます。

脳卒中

脳卒中は血栓などで脳血管が詰まる「脳梗塞」と、脳の血管が破れる「脳出血・くも膜下出血」に分類されます。脳卒中の主な症状は以下のとおりです。

  • 片側の手足が動きにくい、痺れる
  • 顔の半分が動きにくい、痺れる
  • 言葉が出にくい

脳卒中は発症すると後遺症が残りやすく、その後の生活に支障が出る可能性がある病気です。

糖尿病

糖尿病は血糖値を下げる「インスリン」というホルモンの効果が弱まり、高い血糖値が続く病気で、人工透析が必要になることもあります。3大合併症(網膜症・腎症・神経障害」を伴うと視力低下などを招き、心筋梗塞や脳卒中といった重大な病気の原因にもなります。

高血圧症

高血圧症の主な原因は塩分の過剰摂取ですが、睡眠不足も原因の一つです。血圧が高いと血管にかかる負荷が大きくなり、動脈硬化(血管が硬くなること)が進行します。動脈硬化によって血管がボロボロになると、心臓病や脳卒中などを招きます。

肥満、メタボリック・シンドローム(メタボ)

睡眠不足で食生活が乱れると、肥満やメタボになりやすくなります。肥満やメタボは「睡眠時無呼吸症候群」の原因になります。これは睡眠時に気道(空気の通り道)が塞がって、呼吸ができなくなる病気です。

体内に酸素を取り込めないので血圧が高くなり、動脈硬化や心臓病のリスクが高まります。睡眠時無呼吸症候群は寝ている間に起こるので、本人にはわからないケースが多いです。

脂質異常症

脂質異常症は、血液中の中性脂肪やコレステロールの濃度が異常に高くなる病気です。肥満やメタボと同じく、睡眠不足による食生活の乱れなどが原因で発症します。脂肪やコレステロールによって血管に負担がかかると動脈硬化が進行し、心臓病や脳卒中などのリスクが高くなります。

これらの生活習慣病の他、精神疾患の「うつ症状」になることもあるので、十分な睡眠を取ることは身体面だけでなく精神面にとっても重要です。

自分の状態を理解する|生活習慣病のリスクをチェック

「生活習慣病ではないか心配」という人は多いでしょう。そこで自分の状態を知るために、生活習慣病のチェックリストで確認してみましょう。

①生活
□40歳以上である
□20歳時より体重が10kg以上増えている
□お腹まわりがぽっこり出ている
□大食漢である
□タバコを吸う
□お酒をよく飲む
□カラダを動かすのが嫌い
□夜更かしが多く、睡眠不足である
□多忙で休養が取れない
□ストレスがたまっている

②食事
□ご飯やパンなど、炭水化物の摂取が多い
□脂っこいものが好き
□ほぼ毎日間食をしている
□深夜の時間帯によく飲食をする
□朝食は食べたり、食べなかったり
□早食い、ドカ食い、ながら食いが多い
□濃い味付けが好みである
□外食やファストフード、レトルト食品をよく利用する
□甘い清涼飲料水をよく飲む
□野菜や海草類の摂取量が少ない

③運動
□運動不足を自覚している
□1日の歩数は7,000歩未満が多い
□移動には車をよく使う
□つい階段を避けてしまう
□継続して行っているスポーツはない

①の生活項目で、5個以上当てはまる人は要注意です。特に食事や運動を見直しましょう。
②の「食事」の項目で5個以上当てはまる人も要注意です。食事は規則正しく摂り、食べすぎないように注意してください。
③の「運動」の項目で3個以上当てはまる人も要注意です。運動を習慣にすることをおすすめします。

引用:生活習慣病のリスクをチェック!

睡眠不足を解消するための方法とは

睡眠不足を解消するためには、単に「長時間眠ればよい」というわけではありません。睡眠は「量」だけでなく「質」も重要です。質の高い睡眠を取るためには、朝起きたら太陽の光を浴びる、運動の習慣をつけるなど、生活習慣を整えることから始めましょう。睡眠の質を高めて、睡眠不足を解消する方法を詳しく説明している記事もあります。併せて確認すると、睡眠についての理解がより深まるでしょう。

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日々睡眠をしっかり取ることで生活習慣病を予防する

睡眠不足は、本人が思う以上に身体に大きな負担をかけます。負担が積み重なると生活習慣病を招き、生活にも支障が出ます。生活習慣病を予防するためには、睡眠の量と質を確保することが大切です。