たばこは百害あって一利なし|喫煙によってリスクが激増する8つの生活習慣病とは
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「たばこは百害あって一利なし」といわれるように、健康にさまざまな悪影響を及ぼします。

たばこには肺がんをはじめとする呼吸器疾患を引き起こすイメージがありますが、肺に限らず全身のがんや心臓病、脳卒中、糖尿病など、さまざまな生活習慣病のリスクも高めることがわかっています。

この記事では、喫煙と生活習慣病の因果関係について詳しく説明します。

喫煙は生活習慣病のリスクを高める

喫煙によって、さまざまな生活習慣病のリスクが高まることがわかっています。

2016年に厚生労働省が公表した「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書」では、喫煙と生活習慣病との因果関係をレベル1からレベル4までの4段階で判定しています。

最も関連があるとされる「レベル1:科学的証拠は、因果関係を推定するのに十分である」と判定された疾患は、以下のとおりです。

  • がん:肺や咽頭など呼吸器、食道や胃など消化器、膀胱、子宮頸部
  • 循環器の疾患:心臓病や脳卒中
  • 呼吸器の疾患:慢性閉塞性肺疾患(COPD)、呼吸機能の低下
  • 糖尿病:2型糖尿病の発症
  • その他:歯周病、ニコチン依存症、妊婦の喫煙による乳幼児突然死症候群(SIDS)など

喫煙は、日本人の死因の上位を占める「がん」「心臓病」「脳卒中」を引き起こす原因の一つなのです。

また近年では、紙たばこだけでなく、たばこの葉を加熱して発生するエアロゾル(蒸気)を吸引する「加熱式たばこ」や、ニコチンを含まない香料などを加熱してエアロゾルを吸引する「電子式たばこ」なども多く利用されています。

加熱式たばこは、たばこの葉が使われているためニコチンなどの有害性物質が含まれています。紙たばこのように煙は出ませんが、目に見えない有害物質が含まれているのです。

電子たばこにはニコチンが含まれていませんが、世界保健機構では「電子たばこのエアロゾルにさらされると、健康に悪影響がある」と指摘されています。ニコチンの有無にかかわらず、使用者本人、周囲ともに健康被害が生じる可能性があるのです。

そもそも喫煙はなぜ健康に悪い影響を与えるのか

たばこの煙には、発がん性物質を含む多くの有害化学物質が存在します。これらの有害物質を含む煙は肺に取り込まれた後、血液を通して全身に運ばれます。

そのため煙の通り道である喉や肺だけでなく、全身の器官に悪影響を与えるのです。

ニコチン・タール・一酸化炭素による悪影響

有害物質の中でもニコチンやタール、一酸化炭素は、特に生活習慣病を引き起こしやすい成分です。これらの有害物質によって動脈硬化や高血圧、健康な細胞のがん化などが促進され、さまざまな生活習慣病を引き起こします。

ニコチン依存性によって喫煙を繰り返し、習慣化することも、たばこによる健康被害の原因の一つです。

また、ニコチンが含まれていない電子たばこに関しても、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドなどといった発がん性物質を発生するものがあると報告されています。エアロゾルを吸引することによる健康被害の可能性や、たばこの葉を使用していないため危険性の検証が不十分であるケースもあるため、紙たばこと同様に注意が必要です。

具体的にどのような生活習慣病になるのか

喫煙によって生活習慣病のリスクが高まり、健康に悪影響を与えると説明しました。ここからは、たばこによって引き起こされる8つの生活習慣病について解説します。

たばこによって引き起こされる生活習慣病1:がん

たばこの煙は、60種類以上の発がん性物質を含んでいます。これらは喫煙によって肺に取り込まれ、血液を通して全身に行き渡ります。そのため、煙が直接通る呼吸器のがんだけでなく、さまざまな部位のがんの原因となるのです。

たばこによって引き起こされる生活習慣病2:心臓病

ニコチンは交感神経を刺激し、血管を収縮させます。その結果血液の流れが悪くなり、血圧と心拍数が上がることで心臓や血管に負担がかかります。さらに一酸化炭素などの有害物質によって血液がどろどろになり、それが動脈硬化を促進するため、心臓病のリスクが高まるのです。

心臓の血管が詰まる心筋梗塞や、血液の流れが悪くなる狭心症の主な原因は動脈硬化です。

たばこによって引き起こされる生活習慣病3:脳卒中

脳卒中は脳の血管が詰まったり、血管から出血したりすることで起こる脳の疾患です。血管が詰まった場合は「脳梗塞」、脳内で血管が出血した場合は「脳出血」や「くも膜下出血」と呼ばれます。

喫煙は動脈硬化を促進します。また、有害物質によって血管の壁が損傷したり、血栓ができやすくなったりするため、脳卒中のリスクが高まります。

たばこによって引き起こされる生活習慣病4:糖尿病

喫煙には以下の作用があることがわかっているため、糖尿病の原因になるともいえます。

  • 交感神経が刺激されて血糖値が上昇する
  • 血糖値を下げるインスリンの働きを阻害する

すでに糖尿病を発症している人がたばこを吸うと治療の効果が出にくくなるだけでなく、動脈硬化が促進されるため心筋梗塞や脳卒中、糖尿病腎症といった糖尿病の合併症を発症するリスクも高くなります。

たばこによって引き起こされる生活習慣病5:高血圧症

喫煙により交感神経が刺激され、末梢血管が収縮することで血圧が上昇します。血圧が高い状態が続くと、動脈硬化が起こりやすくなります。

高血圧症の合併症である心臓病や脳卒中は動脈硬化が原因なので、高血圧症の人の喫煙はかなりリスクが高いといえます。

たばこによって引き起こされる生活習慣病6:肥満・メタボリック・シンドローム(メタボ)

肥満やメタボの主な原因は食べ過ぎや運動不足ですが、喫煙も影響します。ニコチンには中性脂肪を増加させたり、基礎代謝を下げたりする作用があるからです。

メタボは単に太っている状態ではなく、内臓脂肪が原因で高血圧・高血糖・脂質異常症を併発している状態を指します。喫煙はこれらを促進させるだけでなく、メタボを原因とする動脈硬化のリスクも高めるのです。

たばこによって引き起こされる生活習慣病7:脂質異常症

脂質異常症とは、血液中の中性脂肪や善玉・悪玉コレステロールの値が基準値を超えている状態のことです。脂質異常症は動脈硬化の原因となるため、十分注意してください。

たばこに含まれる有害物質は脂質の代謝に悪影響を及ぼすため、喫煙者は脂質異常症になりやすいといえます。

たばこによって引き起こされる生活習慣病8:慢性閉塞性肺疾患(COPD)

喫煙は、呼吸器疾患や肺・呼吸機能の低下を引き起こす原因でもあります。新型コロナウイルス感染症においても、喫煙は重症化リスクの要因となることがわかっています。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、肺の炎症によって呼吸困難になる疾患です。最大の原因は喫煙で、肺の機能が低下することによって息切れやせき・たんが慢性化します。

受動喫煙によるリスクとは

たばこの煙には喫煙者が吸い込む主流煙と、火が付いた部分から出る副流煙があります。自分がたばこを吸わなくても、喫煙者が近くにいると副流煙を吸い込むことになります。これが受動喫煙です。

主流煙よりも副流煙のほうが、発がん性物質を含む有害物質の含有量が多いことがわかっています。喫煙は本人だけでなく、周囲の人にも深刻な健康被害を及ぼすのです。

たばこをやめる方法

ニコチン依存性の人は、一時的に禁煙しても「たばこを吸いたくてたまらない」という病的な症状(離脱症状)に耐え切れず、再びたばこを吸ってしまうことが少なくありません。

身体的なニコチン依存に加えて、「たばこを吸わないと落ち着かない」といった心理的な依存も禁煙を阻む要因です。

たばこをやめるためには、身体的・心理的ニコチン依存に対して正しくアプローチする必要があります。たばこをやめる主な方法は、以下のとおりです。

  • ニコチンパッチ・ガムなどの禁煙補助薬を利用する
  • 「たばこを吸わないと集中できない」といった心理的依存(思い込み)を解消する
  • たばこを吸いたくなる場面について個別に対策を行う

また、健康保険が適用される禁煙外来も禁煙治療に有効な手段の一つです。禁煙外来では、飲み薬やニコチンパッチなどの禁煙補助薬やカウンセリングによって、身体的・心理的依存を少しずつなくしていきます。

禁煙してあらゆる生活習慣病を予防する

生活習慣病のリスクは、禁煙によって確実に下がります。

ニコチンには強い依存性があるため、禁煙は容易ではありません。まずは、ニコチン依存症や喫煙による健康被害について正しく理解することが大切です。自分一人で禁煙する自信がない場合は、禁煙外来を活用することをおすすめします。

禁煙によって生活習慣病を予防し、健康な身体を取り戻しましょう。