運動不足が糖尿病のリスク!自信をもって「十分な運動をしている」と言えますか
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自信をもって「十分な運動をしている!」と言える方は、あまり多くないのではないでしょうか。運動不足は肥満や血糖値を上げる原因であり、糖尿病になるリスクを高めます。

この記事では、運動不足と糖尿病の関係について考えます。また、糖尿病を予防するために必要な「十分な運動」について、運動の種類や頻度などを具体的に解説します。

運動不足が気になる方は、ぜひ参考にしてください。

運動不足が原因で糖尿病になる人は多い

糖尿病は生活習慣の一種で国が定める重要疾患のひとつです。運動不足はその糖尿病のリスクを高める大きな要因。

運動量が減ると糖尿病の原因である肥満になりやすくなるだけでなく、筋肉の衰えや血行の悪化によってインスリンの効果が弱まり、血糖値が下がりにくくなります。

糖尿病とはどのような病気なのか

糖尿病は血糖値を下げるインスリンが減少したり、うまく働かなくなったりすることで、高血糖の状態が慢性化する病気で、肥満や運動不足、食事などの生活習慣が原因で発症します。

自覚症状はありませんが、高血糖の状態が続くと血管がボロボロになり、さまざまな合併症を引き起こします。

日本において失明の主な原因である「網膜症」、腎臓の働きが低下して人工透析が必要になる「腎症」、手足のしびれなどを起こす「神経障害」は糖尿病の三大合併症であり、いずれも日常生活に支障をきたす深刻な病気です。また、心臓病や脳卒中など命に関わる合併症も引き起こします。

糖尿病の診断基準

日本糖尿病学会の「糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告」によると以下数値により糖尿病と診断されます。

① 空腹時血糖値が126mg/dl以上
② 75g経口糖負荷試験(OGTT)2時間値が200mg/dl以上
③ 随時血糖値が200mg/dl以上
④ HbA1c(国際標準値)が6.5%以上

糖尿病と診断されるまでには、大抵複数回の検査を行います。初回の検査で①〜③のいずれかと、④の数値が計測された場合、すぐに糖尿病と診断されます。また、④の条件がみたされなくとも、①〜③のいずれかの条件にあてはまり、かつ糖尿病の代表的な症状が確認されても、初回の検査で糖尿病と診断されます。(糖尿病の代表的な症状:喉が渇く頻度が多い、体重の現状、頻尿など)

初回の検査で、①〜④のいずれかの数値が確認されなくとも、糖尿病予備群と診断を受けた場合は、再検査をします。再検査で上記の条件に当てはまる場合もあり、1回の検査で終わらないこともあります。再検査で糖尿病と診断されることもあります。

運動不足が続くと糖尿病になる理由

運動不足と糖尿病は、具体的にどのように関係しているのでしょうか。 ここでは、運動不足によって糖尿病になる理由を詳しく解説します。

運動の習慣がないと血糖値が下がらないから

運動によって筋肉に血流が流れ、多くのブドウ糖が細胞に取り込まれます。するとインスリンの効果が高まり、血糖値が下がりやすい状態になります。また、運動によって多くのエネルギーが消費されると、血液中の糖が使われるため血糖値が下がります。

運動をしていない状態が長く続くと血流が悪くなり、筋肉量が減ることでインスリンの効果が弱まります。加えてエネルギー消費量も減少するため、血糖が下がりにくい状態になるのです。

代謝が低下してインスリン抵抗性が出るから

健康な人の血液にも糖は存在しますが、血液中の糖が増えすぎることがないのは、インスリンの働きによってうまく細胞内に取り込まれているからです。インスリンは、糖を細胞の中に取り込む際の鍵のような働きをします。

運動不足によって肥満になると代謝が低下して、鍵であるインスリンがうまく働かなくなります。するとインスリンが足りているにも関わらず、細胞の中に糖が取り込めず、血液中にあふれて血糖値が上がります。これを「インスリン抵抗性」と呼びます。運動不足が続くと代謝が低下するため、インスリン抵抗性が高まるのです。

運動不足によって肥満になると代謝が低下して、鍵であるインスリンがうまく働かなくなります。するとインスリンが足りているにも関わらず、鍵が開かないため糖が血液中にあふれて血糖値が上がるという「インスリン抵抗性」と呼ばれる状態になります。運動不足が続くと代謝が低下するため、インスリン抵抗性が高まるのです。

糖尿病にならないために日常に取り入れるべき運動とは

運動は、糖尿病対策において非常に有効です。身体を動かすとインスリン抵抗性が改善し、血糖が下がりやすい状態になります。適度な運動を習慣化することは糖尿病だけでなく、肥満や生活習慣病の予防にもつながります。

ここでは、糖尿病にならないために日常生活に取り入れるべき運動について、ポイントや注意点を押さえながら詳しく紹介します。

血糖値を下げるには有酸素運動と筋トレが効果的

血糖値を下げるために効果的な運動は、有酸素運動と筋トレです。これらを組み合わせて行うと、血糖値のさらなる改善が期待できます。

有酸素運動はウォーキングやジョギングなど、「ややきつい」と感じる中等度強度の運動を行いましょう。太極拳やヨガも全身を使うため、おすすめです。

筋トレでは腹筋やスクワットなど、大きな筋肉を使うことを意識しましょう。「筋トレ」とはいっても、ジムに通ったり特別な器具を用意したりする必要はなく、自宅で手軽に行えるトレーニングでも十分な効果があります。踏み台昇降や階段を昇る動作でも、筋肉が鍛えられます。

また、プールの中を歩く水中散歩は膝や腰への負担が小さく、有酸素運動と筋トレの効果を同時に得られるため、特に運動に慣れていない人や高齢者におすすめです。

運動頻度は週3日以上、週150分以上を目標に

理想的な運動頻度は、以下のとおりです。

  • 有酸素運動:週3回以上(できれば毎日)、1回あたり20~60分、1週間に150分以上
  • 筋トレ:週2~3回、1セット10~15回を1~3セット

血糖値を下げる効果は、運動を中断すると3日ほどで失われます。回数や頻度が少なかったとしても、継続することが重要です。無理のない範囲で運動を行いましょう。

血糖値を下げるために行う運動の注意点

血糖値の改善や糖尿病対策を目的とした運動を行う際は、以下の点に注意してください。運動の効果を高めるには、自分に合ったペースで身体を動かすことが大切です。

  • すでに高血圧や糖尿病を発症している場合は、血圧が上がる高強度の筋トレは避ける
  • 運動前の準備体操や、運動後のストレッチを忘れずに行う
  • 食生活の見直しもセットで行い、運動後の食べ過ぎに注意する
  • エレベーターではなく階段を使うなど、日常生活での運動量を増やす

運動を習慣化して糖尿病を予防しよう

適度な運動は糖尿病だけでなく、肥満やメタボ、高血圧など他の生活習慣病対策としても有効です。

何よりも継続することが重要なので、日常生活のなかで少しずつ身体を動かす機会を増やしていきましょう。無理なく、楽しみながらやるのが運動を長続きさせるコツです。

工夫しながら運動を習慣化して、糖尿病を予防しましょう

文・WELLXiL編集部