職場環境を改善するには欠かせない、ストレスチェック制度について
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労働安全衛生法が改正され、ストレスチェック制度が義務化されました。ストレスチェック制度を活用すれば、今まで見えなかった社員のストレス度を可視化できます。ストレスチェック制度を活用して、ホワイトな職場環境を目指しましょう。

ストレスチェック制度とは

ストレスチェック制度は、労働安全衛生法の改正によって2015年に義務化された制度です。実施義務があるのは50人以上の事業所で、年1回行わなければなりません。ストレスチェックによって社員の心理的負担を可視化し、把握することで、職場環境に問題がないかどうかを客観的に判断できます。

ストレス度が高い場合は医師の指導や業務負担の軽減、配置転換など、職場環境を適切に改善する必要があります。

ストレスチェック制度が義務化された背景

ストレスチェック制度が義務化された背景は、うつ病などの精神疾患による労災認定件数の増加です。2010年時点の精神疾患による労災認定件数は308件で、2011年は325件、2012年は475件と増えています。

その後も精神疾患の労災認定件数は増加し、ストレスチェック制度が義務化された2017年は506件でした。この状況を打破するために導入されたのが、ストレスチェック制度です。

ストレスチェックを実施することで、社員のメンタル不調の予防・早期発見につながります。

ストレスチェック制度の対象者

ストレスチェック制度の対象者は労働者です。厚生労働省のマニュアルには「期間の定めのない労働契約によって使用される者」「1週間の所定労働時間が4分の3以上である者」と記されています。

上記の条件のどちらかに該当すれば、アルバイトやパートであってもストレスチェック制度の対象になります。

健康診断との違い

健康診断との大きな違いは、受けるかどうかを対象者が決められることです。健康診断は社員の義務なので、必ず受けなければなりません。一方でストレスチェックは、事業所には実施義務がありますが社員には受ける義務がないので、対象者自身が受けるかどうかを決められます。

これが、ストレスチェックと健康診断の大きな違いです。

ストレスチェックを行わないリスク

事業所に実施義務があるストレスチェックですが、社員には受ける義務はありません。そのため、受検率によっては「やる意味がない」と考える事業者もいるでしょう。

しかしストレスチェックを行うと、さまざまなリスクを回避できる可能性が高まります。

罰則が科せられる場合がある

義務化されたものの、実施しないことに対する罰則はありません。ただし、労働基準監督署へのストレスチェック実施報告をしないと、50万円以下の罰金が科せられます。罰則がないとはいえ、社員が精神疾患になった時に問題になるので、ストレスチェックは積極的に行いましょう。

ストレスチェックを適切に実施していても、報告を怠ると罰金の対象となることには注意が必要です。

職場環境を適切に改善できない

ストレスチェックを行わない最大のリスクは、職場環境を適切に改善できないことです。ストレスチェックを行えば、メンタル不調の有無やその原因を把握できるため、それをもとに職場環境を改善できます。

しかしストレスチェックを行わないと、企業は職場環境の問題を把握できないため、適切に改善することができません。繰り返しになりますが、社員のストレスを軽減するためにも、ストレスチェックは必ず実施しましょう。

ストレスチェックの結果は上司にばれる?

ストレスチェックの結果は、昇進や昇給に影響するのでしょうか。結論からいえば、ストレスチェックの結果を上司が知ることはないため、影響しません。ストレスチェックの結果を見ることができるのは、実施者と人事評価の権限を持たない実施事務従事者に限定されているからです。

これは厚生労働省のストレスチェック制度マニュアルの規定でも定められており、社員に不利益がないよう配慮されています。本人の同意がなければ、情報開示が行われることもありません。

ストレスチェックの結果が良ければ業績向上?

ストレスチェックの結果が良ければ、業績は向上するのでしょうか。結果が悪い企業よりも、業績が向上する可能性は高いといえます。生産性とメンタルは密接に関わっており、社員がメンタル不調に陥ると生産性低下につながります。

ストレス度を改善すれば、数億円単位の利益が生まれる可能性もあるそうです。ストレスチェックの結果が良いということは、適切な職場環境で業務が行われていると判断できるので、業績の向上が期待できます。

ストレスチェックでより良い職場環境を目指そう

ストレスチェック制度を適切に運用すれば、社員のメンタルの状態を可視化できるため、職場環境を客観的に把握できます。職場環境を改善できればメンタル不調の予防につながるだけでなく、うつ病などの発症・重症化リスクを軽減できるでしょう。

社員のストレスを減らすことができれば生産性が向上するため、業績にも良い影響をもたらします。ストレスチェックを活用して、より良い職場環境を作りましょう。